初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
店内にはシャンソンと酔客らの賑やかな声で満たされている。
おかげで、周囲を気にすることなく説明を終えたのだった。
京香は恋愛経験が豊富なだけあり、思いもよらない仮説を口にする。
「それって、遥奈の気持ちが固まるまで、待ってくれてるんじゃないの?」
「……そうなのかな。でも……言わないってことは、やっぱりそういうことなんじゃ……」
京香に同意しかけるも、確証がなく、遥奈の心はぐらぐらと揺れていた。
「まぁね。確かに、そういうズルイ男はいるけどね。けど、その人がそうとは限らないんだし。直接、確かめればいいんじゃない? 付き合う気はあるのかって。それで、相手の反応を見るしかないわね。もうなんて顔してるのよ。遥奈の初恋相手なんだから、自分の見る目に自信持ちなさいよ」
京香の言葉で思い浮かぶのは元彼のことで、思案顔だった遥奈は、暗い顔で声を詰まらせた。
「……っ」
「ああ、元彼のことね。アレは向こうに言い寄られて交際しただけなんだから、あんなの除外よ」
すぐに察してフォローしてくれる京香の優しさのおかげで、沈みかけていた心が浮上する。
「そうだね、ありがとう」
遥奈は感謝の言葉と共に、心からの笑顔を返した。
「それにしても、初恋相手から告白なんて、いいなぁ。羨ましい。素敵な人なんだろうなぁ」
独り言ちる京香の言葉で思い出されるのは、遥奈が零に片想いしていた当時のことだ。