初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 好奇心の赴くままに遥奈は図書室へと足繁く通い、金曜は閉館ギリギリまで粘るも、零は現れなかった。

 ちょうどその頃、校内弁論大会が行われた。入学式から三ヶ月が経った頃だ。

 零が読み上げた弁論のテーマは、『心身症』について。

 イギリス人の父と国際結婚し、慣れない生活環境や異なる慣習によるストレスから心身症を患い療養中だった日本人である母のことを綴っていた。
 
 それをきっかけに、心療内科医になるという夢ができたと語る零は、初めて目にした時よりもキラキラと輝いていた。

 赤面症に思い悩んでいた遥奈は、心身症という疾病に強く興味を引かれた。

 心身症について調べた遥奈は、藁にも縋る思いで恩師である沢渡が営むこころメンタルクリニックを受診した。

 結果として、遥奈は心療内科医を志すようになったのだ。

 それまで図書室に好きな本を読むために通っていたのが、医師になるための勉強をするために通うようになる。

 目標ができた遥奈は、顔付きも明るくなっていたかもしれない。

 引っ込み思案な性格は相変わらずだったけれど……

 夏休みを迎える頃には友人もできて、充実した学生生活を送るようになっていた。

 一学期の終業式を来週に控えた金曜日の放課後、転機が訪れる。

 図書室に、学園の貴公子である零が現れたのだ。

 しかも、何の前触れもなく突然に。

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