初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
それでも何か言葉を返そうと、遥奈が口を開けようとした瞬間。
「……っ」
ふっと悪戯っぽい笑みを湛えた零が、形のいい唇の前に人差し指を立てて囁いてくる。
「しー、少しの間だけでいいから、かくまってもらえるかな?」
遥奈は驚きのあまり言葉を失いながらもコクコクと頷いた。
すると、零はホッとしたように息をつく。
その仕草が妙に色っぽくて、遥奈は咄嗟に視線を逸らす。
遥奈はドキドキ高鳴る胸をどうにかしたくて、制服の胸もとを握りしめた拳でぐっと抑えていた。
そうでもしないと、心臓が胸を突き破ってしまうかと思ったのだ。
遥奈にとって、それほどの衝撃だった。
しばらくして、図書室に三年生の派手な女子グループが入室してきて、誰かを探しているようだった。
「あれ? ここにもいない」
「ホントだ。じゃあ、もう帰っちゃったのかも」
「みたいだね。帰ろ、帰ろ」
おそらく、零はそのグループから逃れるために図書室に避難してきたのだろう。
時折、女子生徒に囲まれた零が困惑している場面に遭遇したことがあったので、察しが付いた。