初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
遥奈は零に魅入られながらも、何とか精一杯の笑顔と感謝の言葉を返した。
「あ、ありがとう……ございます」
「どういたしまして。じゃあ、またね」
零は満足したように遥奈を見遣ると、屈託ない笑みとその言葉を残して図書室から退出してゆく。
零は学園の貴公子で、遥奈はどこにでもいる地味で平凡な女子中学生。
学園のアイドルとモブ。
また、なんてあるはずもないのに……
――じゃあ、またね。
それでも、そう言ってくれた、零の優しさが嬉しくてどうしようもなかった。
何より、勉強に励む遥奈を優しく気遣ってくれた。
心療内科医になるという目標ができて勉強に励むようになった遥奈を、両親は喜んで応援してくれていた。
けれど、創業者の祖父から老舗ホテルの後継者として厳しく躾られてきた兄は違った。
『医者なんて、嫁の貰い手がなくなるぞ』『いくら頑張ったところで、引っ込み思案でコミュ障のお前が医者なんてなれるわけないだろ』
ことある事にそう言われていたのもあり、零にかけてもらった言葉がことさら胸に響いたのかもしれない。