初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
写真で見るより、艶やかで品のある佇まいは、咲き誇る深紅の薔薇のよう。
美男美女の二人がいるだけで、ラグジュアリーなラウンジの空間が一層華やいだ気がする。
怖いもの見たさだろうか。
一刻も早く視界から排除したいのに、目を逸らせない。
あんな噂より、零を信じる。
なんて言っておきながら、いざ目にしてしまうと、言いようのない不安に駆られてしまう。
心が絶望に侵蝕されて、今にも足元からガラガラと崩れ落ちてしまいそう。
どす黒い感情までもが頭の中で渦を巻く。
――嫌だ、来ないで!
遥奈は心の中で叫んでいた。と、そこに、意外にも零から声がかかる。
「遥奈。もう終わったの? お疲れ様」
零は遥奈の姿を捉えた瞬間、心底嬉しそうに秀麗な相貌を綻ばせた。
その表情からは、遥奈に会えて嬉しい……という感情しか読み取れない。
(で、でも)
「……どうして……?」
いつもの遥奈なら見蕩れていただろう。
だが、予想だにしない展開に思考が伴わない。
思考機能がフリーズした遥奈は二の句が継げず、二人を凝視したままでいた。