初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
遥奈の元に歩み寄ろうとする零の肩を掴んだ紫帆が声をかけ、零が即座に応える。
「零。お邪魔しちゃ悪いし、先に行ってるわね」
「ああ、悪い。打ち合わせの時間には間に合わせるよ」
「了解」
慣れた様子で名前を呼び捨てにした紫帆に、遠慮のない砕けた口調の零。
二人のやり取りがやけに親密そうで、遥奈の胸がツキンと鋭い痛みを訴えた。
「では、失礼しますね」
人知れずショックを受けていた遥奈に、上品な笑みを湛えた紫帆が軽く会釈するとそのまま立ち去っていく。
二人とも、クラシカルなスーツに身を包んでいる。零の様子や身なりからも、私用でないのは一目瞭然だが……。ゴシップ記事のせいであれこれ勘ぐってしまう。
紫帆との関係を聞いてスッキリしたいのに、遥奈は会釈を返すのがやっとで、確かめる余裕などなかった。
そんな中、背後にいる零へと振り返った沢渡が会話に加わってくる。
「あれ? 零くんじゃないか。こっちに戻っているとは聞いていたけど……。これは、どういうことかな?」
どうやら、二人とも以前からの知り合いのようだ。