初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
頭が混乱し覚束ないながらも思考を巡らしていたのだが……
遥奈と零を見比べながら意味深な笑みを浮かべる恩師の姿に遥奈は頭を抱えたくなった。
沢渡の隣では、野沢まで興味津々といった感じで聞き耳を立てている。
説明しようにも、言葉が見当たらない。
とはいえ、バカ正直に、ありのままを伝えるわけにもいかないし……
などと考えを巡らせている隙に、零が沢渡に挨拶を交えつつ、挑発的な言葉を返す。
「沢渡先生、大変ご無沙汰しております。お元気そうで何よりですよ。あっ、でも、この件は、他言無用で、あたたかく見守っててくださいね。先生も、馬に蹴られたくはないでしょう?」
青ざめた遥奈がギョッとしている間に、今度は沢渡が零に低く真剣な言葉を紡ぎ出す。
「零くんとは長い付き合いだし、わかっているとは思うけど。可愛い教え子を泣かせたりしたら、黙ってはいられないからな」
零の気持ちがどれほどのものかを見定めるかのように。
「もちろん、心得ていますよ。泣かせたりしません。大切にしますよ。神に誓ってもいいです」
沢渡の言葉に、零は一切の迷いも、澱みもない、真剣な声音で真摯に答えた。最後には、神に誓いまで立てて――
遥奈は目の前で繰り広げられている、この状況が現実だとは思えず、大混乱を極めていた。