初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
「お好きにどうぞ。元々会う予定だったようだし。馬に蹴られたくはないからね」
沢渡のおどけた声に、ハッとした遥奈が割って入るも……
「いえいえそんな。ちょっと驚いただけで、疲れていないので大丈夫ですから」
「いつもこき使われてるんだから、たまには休まないとダメだよ。ほら、立って」
零は悪戯っぽい笑みを沢渡に向けつつ、遥奈を強引に立たせると腰に手を添えスタスタと歩みを進めてゆく。
「誰がこき使っているって?」
「あっ、ちょ――零さんっ」
「それじゃあ、先生、また改めて」
沢渡の抗議を背中で受け止めた零は、爽やかな声を放つと振り返ることなくエレベーターへと向かったのだった。
エレベーターへと乗り込み扉が閉まるなり、遥奈は零に抱き寄せられ腕に閉じ込められた。
爽やかなベルガモットの香りと零のぬくもりとにふわりと包み込まれる。
それだけで、あんなにも混乱していたはずの心が凪いでゆくから不思議だ。
――こんなにもこの人のことが好きなんだ……
零への気持ちを改めて実感していると、耳元に顔を埋めた零から意外にも不安そうな弱々しい声が届いた。