初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
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いつものように壁際の目立たない席を陣取り、「賭けるにしたって、どうするんだよ」と零が紫帆に声を放ったちょうどそこに、女の子の短い悲鳴が響き渡った。
「キャッ!」
視線を向けると、ドレスにシャンパンをかぶり立ち尽くす女の子の姿が見て取れる。
近くには、グラスを手にした男が立っており、どうやらその男にぶつかったようだ。
赤い顔と千鳥足から、男が酔っているのは明らかだった。
「そっちがぶつかってきたからだろ。俺は何もしてないからなっ」
茫然としたままの女の子に一方的に捲し立てる男に対し、周囲から非難めいた視線が集中している。
その様子からも、悪いのは酔っ払いの男なのだと察しがついたが、周囲に動く気配はない。
誰も好き好んでトラブルに巻き込まれたくはないからな。
周囲が動かなくても、すぐにスタッフが収拾を図るだろう。現に、騒ぎに気づいたスタッフらが動きを見せていた。
気の毒だと思うが、下手に関わって、零の正体が露見すれば、余計面倒なことになるのが目に見えている。
だから、零も見て見ぬ振りを決め込むつもりでいたのだ。