名もなき空に、青い風が吹く
 百円ショップで材料をそろえて、樹脂粘土
でパズルのピースを三つ作り上げる。粘土に
マグネットを埋め込んで、パーツを差し込ん
で、アクリル絵の具を塗って、と作業を進め
るわたしはわくわくが止まらない。

 キーホルダーの真ん中には「R」と「I」と
「H」、それぞれのイニシャルが書かれている。
正真正銘、わたしたちだけのオリジナルキー
ホルダー。

――この世に三つしかない、パズルのピース。

 それを持っていれば、わたしたちはずっと
一緒にいられる気がした。きらきらした時間
が、永遠に続く気がした。

 「わたしたち、大人になっても一緒にいら
れるかな?大人になりたくないな。子どもの
まま、ずっと三人でいられないかな」

 突然、感傷的になってそんなことを言うと、
トップコートを塗っていた二人の手が止まる。

 「どしたの、急に」

 大翔が形のいい眉を思いっきり寄せる。
 いっくんは小鳥のように小首を傾げた。

 「だって大人になったらきっと誰かと結婚
するじゃん?そしたら家族が出来るからこう
やって三人で遊んだり出来なくなるよね」

 まだ小学六年だけれど、十年なんてあっと
いう間だ。中学、高校の六年間をあっという
間に通り過ぎて、人生はわたしたちを別々の
レールに乗せる。大人になったわたしたちは
忙しない日常に流され、三人で過ごした子ど
も時代をただ懐かしむだけになるに違いない。

 そう思うと無性に寂しくて、時よ止まれ!
と叫びたい気分だった。

 「あらぁ、上手に出来てるじゃない」

 言葉に窮して二人が顔を見合わせていたと
ころに、二階でお裁縫をしていた伯母さんが
やってくる。微妙な空気が流れかけたリビン
グに、春の陽だまりのような爽やかな空気が
流れた。

 「三人で楽しそうに作業してるから邪魔し
ちゃいけないと思って二階で大人しくしてた
んだけど、バレッタが出来たから持って来ち
ゃった」

 うふふっ、と少女のようににこやかに笑う
伯母さんの手には、白いデイジーの花が四つ
刺繍された小ぶりのバレッタがある。お裁縫
が得意な伯母さんは家事の合間に作った小物
を、ハンドメイド販売サイトで売っているの
だ。手先が器用なうえにセンスがいい伯母さ
んの作品はなかなか人気があるらしく、月に
数万の収入があるという。
< 10 / 30 >

この作品をシェア

pagetop