名もなき空に、青い風が吹く
 大翔とわたしは同じ心の傷を持った仲間だ。
この世界で苦しみを分かち合える唯一の相手
だ。いっくんという接点を失くしていままで
会えなかったけれど、わたしたちはまた引き
寄せられた。きっとこの再会は偶然なんかじ
ゃない。何か意味があるんだと思う。わたし
は大翔の命を救うために、引き寄せられたん
だと思う。

 そう確信して口を引き結ぶと、大翔に強い
眼差しを向ける。信じてくれるかどうかわか
らないけれど、わたしは正直に自分の能力を、
視えてしまった大翔の運命を話すつもりだっ
た。そうしないと、大翔の手なんか握れない。
もう一度手を握ってみないと、その先の未来
が視えない。だから笑い飛ばされても、馬鹿
にされても信じさせるんだ。

 「な、なに?」

 じっと見つめながら身を乗り出したわたし
に、大翔が困惑の表情を浮かべる。ごくりと
唾を鳴らすと、わたしは話を切り出した。

 「実はね、大翔に大事な話があるの」

 「ああ、そんなこと言ってたよな。で、話
って???」

 緊張を和らげるように大翔が薄まったアイ
スコーヒーを飲む。ストローを咥え、ずずっ、
と残りを飲み干した大翔にわたしは真剣な顔
をして言った。

 「わたし、予知能力があるの」

 口にした途端、微妙な空気が流れる。大翔
はストローを咥えたまま、時が止まったかの
ようにぴくりとも動かない。その反応にちょ
っと冷や汗が流れたけれど、わたしは続ける。

 というか、もう一度同じ言葉を繰り返した。

 「あのね、わたし予知能力があるの」

 大翔が目をまたたく。咥えていたストロー
が、ぽろっと唇を離れる。でも薄く口を開い
たまま、なにも言わない。しびれを切らした
わたしは、眉間にシワを寄せて言った。

 「ちょっと、聞こえてる?」

 「……聞こえてる」

 「わたし未来視の能力があるの。手を握る
と、相手の未来が視えちゃうことがあるんだ」

 「それって、いつから?」

 「たぶん……いっくんが亡くなってしばら
くたってからだと思う。気付いたのがそれく
らいだから、もっと前からあったのかもしれ
ないけど」
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