名もなき空に、青い風が吹く
 「うん、視えちゃった」

 「俺を呼び出すくらいだから、めちゃくち
ゃヤバい未来が視えたんだろうな」

 「うん。ほんの一瞬だけど、大翔が病院の
ベッドに寝てて、横に置いてある心電図の線
がピーッって直線になってた」 

 「なるほど。ピーッってなってたんだ」

 「うん。信じてくれ、る?」

 そんな恐ろしい未来。自分が命を落とすと
いう残酷な未来を、突然突き付きられても信
じられないだろうけど。内心、そう思いつつ
大翔の顔をじっと見つめる。

 すると、どういうことだろうか。「信じる」
という信じがたい言葉がわたしの鼓膜を揺ら
した。

 「うそっ、信じてくれるの!?」

 あっけに取られて声を上げると、大翔は口
をへの字にして頷く。まさか、こんなあっさ
り信じてくれるなんて、と、神展開に思わず
心を震わせていると、大翔は涼しい顔をして
とんでもないことを言った。

 「俺も過去が視えるから」

 一瞬、激しい沈黙が流れる。カコガミエル、
って言った?いま。思考停止に陥る一歩手前
の脳ミソが、そう理解する。

 理解した瞬間、体がぶるっと震えた。全身
の肌が粟立って、わたしは勢いよく立ち上が
った。

 「ええええええっ!?」

 ざっ、という擬音が聞こえるくらい店内に
いる客の視線が、一気に集中する。

 「デカイ。声、デカイ。芦香、座って」

 大翔が真顔のまま窘める。我を忘れ、店内
で大声を発してしまったわたしは、向けられ
ている視線に気付き、思い切り肩を竦めた。

 すとん、と力が抜けたように椅子に座ると、
あの日の大翔の反応を思い出した。

 「絶対にわたしが助けるからね!」

 突然意味不明なことを口にして、強く手を
握り返したわたしに、大翔は眉を寄せつつも
頷いたのだ。

 「なんかよくわかんないけど、ありがとう」

と。あれはフラグだった。大翔もわたしと同
じように能力が覚醒していたから、あの時、
言葉の意味を聞いてこなかったんだ。
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