手を、つないで 〜ふたりの未来〜
「一緒に行けばいいんだよ」
「どこに」
「店に」
会社近くの定食屋。1番奥の席に座るなり、高井戸は言った。
「一緒に行って、選んでもらうんだよ。そしたらハズレはないだろ」
それはそうかもしれないけど。
「アクセサリーが駄目だったら?」
「店を変えればいい。雑貨屋さんとかに」
そうか。じゃあ、彼女と初めて出かけたあのショッピングモールがいいかも。
「あの人、アクセサリーってつけてるの見たことないもんなー、でもせっかくの初プレゼントだし、ちゃんとしたものあげたくて、ごちゃごちゃ考え過ぎて、身動き取れなくなってた」
図星だ。無視して味噌汁を飲む。
「でもさ、アクセサリーって、おしゃれだけじゃないだろ」
意味がわからない。俺の顔を見て、高井戸はにやっと笑う。
「牽制」
「あ……」
そうか、そういう意味もある。
「静かな人気を誇る彼女には、必要なんじゃない?松永、独占欲強いみたいだし」
「は?」
「睨んでもダメです。わかります。時々俺にまでやきもちやいてんだろ」
また図星だ。無視してアジフライを口に入れる。
「あの人が、指輪とまではいかなくても、普段つけないアクセサリーつけてたら、周りの奴らには充分だと思う。だから、俺のオススメは、アクセサリー」
アジフライを咀嚼しながら、高井戸の言うことはもっともだと思った。
一緒に買いに行くのも、いい案だ。
なんか今日はいいこと言うなこいつ。気持ち悪いくらいだ。
一応感謝しとこう。
定食は、俺のおごりにした。
会社に戻って、自席だと高井戸に近過ぎるので、休憩スペースに行った。
プレゼントは一緒に買いに行く。
後は、食事とケーキか。
スマホでいろいろと調べながら、段々眠くなってきてしまう。
保険で、昼休み終了5分前にタイマーをかけて、また調べる。
俺の家の近くにおいしいと評判の洋菓子店があるのは知っている。そこのホームページにアクセスすると、ネット予約ができることがわかった。
彼女が好きな、チョコレートのケーキ。ロウソクは、27歳だから7本でいいだろう。
予約確定のボタンを押したら、意識が途切れた。
昼休み終了まで、確かあと10分くらい。仮眠にはちょうどいい時間だ。