手を、つないで 〜ふたりの未来〜
珍しく、彼女が少し酔ったらしい。ご機嫌で、キウイのぬいぐるみを抱っこして、前後にゆらゆら揺れながら、テレビを眺めている。なんとなくつけていたら、始まった旅番組。
旅行。いいな。2人でゆっくりどこかに行きたい。
今まで、俺のせいが大半だけど仕事が忙しくて、会うだけで精一杯で、どこかに行こうっていう意識がなかった。長く休みは取れないから、近場でゆっくりできるところ……考えていたら、目が合った。
「旅行、いいですね」
にこにこしながら彼女が言う。
同じことを考えてる。嬉しくなった。
「ゆっくり、温泉とか」
「いいですね。航さん、普段忙しいから、ゆっくりだらだらとか、どうですか?」
「ゆっくりだらだら?」
聞き返したら、彼女は「んふふ」と笑う。本当に、珍しく酔ってるなあ。
「予定を決めないで、宿で寝ててもいいし、近くを散歩してもいいし、行く気になったら観光してもいいし」
キウイと一緒にゆらゆら揺れながら、ゆっくり言う。
「そういう、だらだらした旅行です。どうですか?」
その口調の通り、のんびりできそうだ。
「うん。いいね」
「よかったー……じゃあ、そんな感じで……いつか、いきましょうね……」
言いながら、眠ってしまった。俺に寄りかかって、気持ち良さそうだ。
そんなに飲んだか?飲んだな。ワインがなくなってた。俺も少し酔ってる。
「茉歩、風邪ひくから布団に」
「んー……」
うなりながら、のろのろと動き出す。キウイはしっかりと抱っこされている。うん、しっかりと。うらやましいなんて思わないからな。
キウイと一緒に、彼女はベッドに横になった。
そして。
「わたるさん……」
呟いて、眠った。微笑んでいる。
やられた。
片付けとか、何もかも放り出したいのをぐっと堪えて、彼女に布団をかける。
残った食べ物は冷蔵庫へ、食器はシンクへ。
時々聞こえる彼女の寝言の笑い声。『うふふ』とか『むふ』とかに癒される。
眠る支度を整えて、彼女の隣で横になる。
彼女は俺に体を寄せて、満足そうに微笑む。
俺の体はいろいろな反応をするけど、心はこの上ない幸福感に包まれて、眠りに落ちた。