手を、つないで 〜ふたりの未来〜


 目を開けたら、目の前にぽわぽわの茶色い物体。キウイのぬいぐるみ。その向こうに、無防備に眠っている彼女。こっちを向いて、キウイを抱いてる。彼女、キウイ、俺で川の字だ。
 昨日はだいぶ飲んだけど、大丈夫だろうか。そう思いながら見ていたら、彼女が目を開けた。
「あれ……松永さん……おはようございます……」
「おはよう。二日酔い、大丈夫?」
「あ、えっと……大丈夫みたいです」
 恥ずかしそうに、キウイで顔を隠してしまった。
「どうかした?」
「いえ……あの……」
 口もふさがってるので、もごもご言う。
「起きて、顔が見られるの、嬉しいなって……」
 それは俺もそう。
「でも見られるのは恥ずかしいです……」
「ああ……ごめん」
 笑いながら謝ると、彼女は首を横に振る。

 いつも思う。この朝を、毎日迎えられたら。
 冗談みたいに口に出せたらいいのかもしれないけど、できないでいる。
 ああ、重たいな俺。彼女にあきれられないだろうか。

「私、昨夜寝ちゃったんですね」
 顔を半分見せた彼女。下半分はまだキウイだから、声はもごもご。
「だいぶ飲んだからなあ、俺も。水飲む?」
 起き上がりながら聞くと、彼女は頷いた。
 ペットボトルを持って戻ると、ベッドから降りて平たいクッションに座っていた。
 こっちを見て、微笑む。部屋着で、髪が少しくしゃっとしてて、リラックスして。
 少しの間、見とれてしまった。俺の部屋に溶け込んでいる彼女を、このまま保存しておきたい。そんな衝動に駆られた。
「……航さん?」
 フリーズした俺を、彼女が不思議そうに見る。
「ああ、ごめん。なんでもない」
 はい、とペットボトルを渡すと、彼女は受け取って微笑んだ。
「ありがとうございます」
 駄目だ。保存なんてしたら、この笑顔は歪んでしまう。そうじゃない。
 彼女がこのまま笑っていられるように。
 俺は、俺にできることをするのみだ。
「朝ごはん食べられますか?どうしましょうねえ」
 俺の重たい決意なんて知らずに、彼女はのんびりそう言った。




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