手を、つないで 〜ふたりの未来〜

 閉めた鍵を開けて外に出る。そのままだとまた彼が心配するから、ドアの鍵をかける。よし、確認した。
 そして、走った。駅に続く道を、彼の背中を捜しながら。
 彼は、私といる時はペースを合わせてくれるけど、1人の時は歩くのが凄く早い。走っても、追いつかないかもしれない。それでも走った。

 今、彼を1人にしたくない。
 お願い、追いついて。
 息があがる。足がショートしたみたいに熱くなって、ちゃんと動いているのかわからない。

 駅に着く直前の信号で、見つけた。よく知っている、愛おしい背中を。
 声が出せなくて、パーカーの裾をつかんだ。
 彼は振り向いて、目を丸くした。
「えっ、中森さん?どうしたんですか⁈」
 息をするのに精一杯で、返事もできなかった。でも良かった、間に合った。
 私がパーカーの裾をつかんでいるせいで、彼はちゃんとこっちを向けないでいる。首をひねってる状態。
「大丈夫ですか?」
 でも離したくなくて、手はそのまま、腰を折って下を向いて、とにかく息をする。
「……ごめ……なさ……」
 絞り出した。声も掠れた。
 動けなくて、とにかく息をする。
 パーカーをつかんでいる私の手を、彼の手が包んだ。
 パーカーを手から外して、その手を握る。そして、引いた。
 私の体を抱き抱えるようにして、背中をさすってくれる。
「あっちのベンチに行きましょう」
 すぐ近くの駐輪場の横にベンチがあることを思い出す。
 彼に手を引かれて、よろよろとベンチに歩く。
 少し息が楽になってきた。
「……すみません……ご面倒を……」
「無理にしゃべらなくていいです」
 無表情、無愛想。三無冷製鉄仮面の2つまで発動してる。追いかけてきちゃったけど、もしかしてそっとしておいた方が良かったのかな。
 彼は私をベンチに座らせて、歩き出そうとする。私は慌てて、またパーカーの裾をつかんだ。
「あのっ……」
 彼は振り向いて、ふっと笑う。
「飲み物買ってきます」
 そう言って、私の手を包んで、パーカーから外した。
「あ……すみません……」
 置いていかれるのかと思った。勘違いで恥ずかしくなってうつむく。
 ぽん。
 頭に、優しい感触。
「すぐ戻ります」
 見上げたら、彼の優しい笑顔があった。


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