手を、つないで 〜ふたりの未来〜
「すいませんでした」
水を飲んで、落ち着いた彼女に頭を下げる。
「俺が誕生日を聞いてなかったからなのに、勝手に腹立てて」
「いえっ、私も一言言えば良かったのに、すみませんでした」
「中森さんは謝らなくていいです。悪いのは俺です」
「そんなことありません。私も悪いんです」
「いや、俺が」
目が合った。
一瞬、間ができて。
2人同時に吹き出した。
少し笑って、息をついた。また2人同時に。そしてまた笑った。
「……走ってきてくれて、ありがとうございます」
落ち着いてからそう言うと、彼女は首を横に振った。
「……追いつけて良かったです。久しぶりに走りました。高校以来かな」
ははっと、照れたように笑う。
「それでも、許してもらえるかどうかわかりませんけど……」
ハッと気付く。
「俺、腹を立ててたのは自分にです。中森さんにじゃありません」
勘違いさせてしまっていた。
「だから、気にしなくていいんです。誕生日のことだって、言えなかったのは俺も忙しくしてたからだし」
ちゃんと、言葉で伝えなくちゃいけない。
「でも、忙しくても、言ってください。俺にしてほしいこととか、中森さんがしたいこととか。俺も言います」
言わないと、また今回みたいになってしまうから。
「俺は、中森さんの誕生日をお祝いしたかったです。だから、言ってほしかったです」
正面切って言うのは怖い。内容がどうでも、相手が彼女じゃなくても。今まではなるべく避けてきた。だから誤解されたことも多かった。『何を考えてるかわからない』と言われることもしょっちゅうある。
「俺は、もっと言ってほしいです。小さいことでも、なんでもないことでも、なんでも言ってほしいです。忙しそうだから、とか遠慮しないで、言ってください」
彼女には、誤解してほしくない。俺も、誤解したくない。
「俺も言いますから。それで、お互いに、笑っていられるように、していきましょう。俺は、中森さんが笑って隣にいてくれるのが、1番嬉しいので……」
言っていて、急に恥ずかしくなった。
話すのに精一杯で、彼女の顔をちゃんと見ていないことにも気がついた。
見ると。
彼女の目に、みるみる涙がたまっていく。
「えっ?」
思わず声が出た。俺は泣くようなことを言ってしまったんだろうか。
彼女の目にたまった涙は、ぼろぼろこぼれ出した。