手を、つないで 〜ふたりの未来〜
終電が行ってしまったので、彼に泊まっていくように言ったら、渋い顔をした。
「あの……帰った方がいいと思います」
「どうしてですか?タクシー代、結構かかりますよ」
今までも何回も泊まってて、下着やTシャツも置いてあるのに。
じっと彼を見たら、彼は手に口を当てる。そしてもごもご。
「今日泊まったら、何もしない自信ないし……」
「え……」
「明日も会社だから……」
確かに、今日は水曜日。この時間から、だと明日は確実にキツい。
「で、でも、やっぱりタクシー代はもったいないし、あの、1日くらいなら頑張ればなんとかなるというか、ええっと……一緒にいたいって気持ちもあって……」
素直に言ってみた。声は小さくなってしまったけど。
今までなら言えなかったけど、どんなことでも遠慮しないって決めたばかりだし。
彼はふーっと息を吐いた。つないでいる手をきゅっと握る。
「できるだけ、我慢します」
口を引き結んで、今から我慢してるみたい。
それを見ていたら、なんだかおかしくなってきた。
我慢できなくて、吹き出してしまった。
「すいません」
笑いながら謝ると、彼は苦笑していた。
「あんまり笑うと、我慢しませんよ」
「えっ……」
我慢しないと、どうなるんだろう。
一瞬考える私に、彼は笑った。
「冗談です。我慢します」
「……もう……心臓に悪いです……」
そんな道中の会話を、家に着いてから思い出している。
家に入って、ドアを閉めた途端、後ろから抱きしめられた。ぎゅうっと。
その後すぐに、彼の方を向かされて、またぎゅうっと抱きしめられる。
「あの……」
「すいません」
頭の上で。それと、抱きしめられてるから、全身から響いてくる声。
「やっぱり我慢できそうにないです」
「え……」
「可愛くて……」
呟いた後、更にぎゅうっと力が入る。
「好きです。どうしたらいいかわかんないくらい好きです」
彼の思いが伝わってくる。ストレートに、強く。
「私も……大好きです」
ぎゅっと抱きしめ返す。力ではかなわないけど、思いだけなら。
「今、こうできてて、凄く嬉しいです」
伝わって。手から、言葉から、全身から。
「俺も……嬉しいです。追いかけてきてくれて、ありがとうございます……」
ふっと力が緩んだ。
一瞬で、熱いキスが降ってくる。
何も考えられなくなって。
もう、頭の中は、彼で一杯になった。