その食べ方が好きなんです
 課長の隣にいる部長が目の前のつまみを口にしながら話し出した。

「あ、はい……」

 赤い目で少し酔っている。どうして食べながら話すんだろう。しかも部長の食べ方はひどかった。

 いっぺんにたくさんの食べ物を口に放り込む。そして、りすもびっくりなくらい、ぱんぱんにほっぺたを膨らませ、口を半開きにして食べる。

 嫌な予感。見てられない。目を反らしたが、音は相変わらず聞こえている。ぐちゃぐちゃという咀嚼音だ。

「ごほっ」

 部長の口から咀嚼途中のお肉と人参らしきオレンジのものが飛んできた。うわあ、き、きたない……。

 私の表情を見た部長はトイレと言っていなくなった。

 * *

 あれから、私は課長に呼び出されて叱られる度、課長の目ではなく課長の口元を見ていた。

 どうしても思い出してしまうのだ。あの綺麗な食べ方。、私は課長が食べているところももう一度見たいという衝動が抑えきれなくなってきた。
 
 入社してすぐに社食で食べ方の綺麗な推し(男性に限る)を探し始めようとしていた私は、探す必要もなく、柊課長というターゲットを見つけることが出来た。

 それからというもの、私の昼休みは彼の口元もとい、食べ方を見る時間となっている。

 大体、課長が食べる場所を決めてくれればいいのだが、結構ばらばらなので、彼が現れてから私は席を決める。

 そして、今日も課長の食べているところがよく見える場所、正面斜め左側に座る。右利きの彼を見やすい場所はここしかない。

 「ねえ、夏奈。そんなに見たいならもっと真正面の席にしたらいいじゃない?角度がどうとか、本当にばかじゃないの?」

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