苦手な同僚の色気たっぷりな鎖骨にメロついた結果
「読んでる間に雷雨もやむだろ。俺は雪町が寝たら出てくから安心しろよ」
 彼は枕元にあったタブレットを操作して絵本を検索して表示する。
 異常事態のせいか、彼が優しい。会社でもこんなにふうならよかったのに。

「……ありがとう」
 とりあえず今日はベッドに寝させてもらおう。

 彼はタブレットを私にも見えるように持つが、邪魔で仕方ない。もっと近くで鎖骨を見たい。なんなら触りたい。
 うっとりとしていると。

「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
「なんで昔話?」
 急に白けてしまった。せっかくの鎖骨タイムが台無しだ。

「おとなしく聞けないのか」
「子供扱いされても困るっていうか。でも子供のほうがおとなしくないかも?」

「量子力学の話でもしてやろうか。よく眠れるだろ」
「詳しいの?」

「言ってみただけ。知らない」
「ちょっとは知ってる内容にしなよ」

「じゃあこの絵本。有名だろ」
 彼が表示した絵本に、目を輝かせた。

「『猫のレストラン』! 私、これ好きだった。出てくる料理がどれもおいしそうで」
「俺も。紙の絵本は実家に大事にまだとってある」

「意外。陽キャ一軍のあなたが絵本を大事にしてるなんて」
「もともと陰キャなんだよ。陽キャは演技」

「そうは見えないけど」
「そうか」
 にやっと彼は笑う。こういう反応だって陽キャそのものにしか見えない。
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