苦手な同僚の色気たっぷりな鎖骨にメロついた結果
「大丈夫だよ」
 幸いにしてどこもおかしくない。国広くんがすぐに助けてくれたおかげだ。鎖骨は最高に素敵だし、もしかして中身はいい人? いやいや。鎖骨につられすぎ。

 ホテルの出口で優衣と山川くんと別れる。ふたりは逆方向の駅だから。

 今日はさんざんだった。
 溺れかかるし、鎖骨は拝めな……いこともなかった。

 隣を歩く国広くんを横目で見る。スーツに戻った彼はシャツをかっちり着ていて、もう鎖骨なんてちらりとも見えやしない。残念。
 て、そんなこと言ってる場合じゃないか。

「今日はほんとにありがとう。命の恩人だよ」
「……そんな殊勝だと調子狂うだろうが」
 彼は照れたように顔をそむける。

 あれ、意外。私も調子が狂っちゃう。

 こういうときは鎖骨でも見てたい。シャツで見えないけど、そこは私の眼力で補正。脳内で彼の鎖骨を合成して、と。彼は好きじゃないけど、鎖骨は別腹。

「おっ。神社があるぞ。お参りしてこうぜ」
 彼が指さす方向、ビルの隙間にひっそりと鳥居がたたずんでいる。

「ちょっとだけね」
 雲行きが怪しいから、早く帰りたい。

 私は彼と一緒に鳥居をくぐる。お賽銭を入れて、拍手(かしわで)を打って手を合わせる。

 素敵な鎖骨をずっと堪能できますように。

 そう願う脳裏にうっかり国広くんの鎖骨が浮かび、慌てた。

 直後、どきん、と大きく心臓が脈打って激痛が走る。
 うっと胸を抑えると、また、どきん、と大きく脈打って痛い。
< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop