苦手な同僚の色気たっぷりな鎖骨にメロついた結果
「シャワー浴びて来いよ。そのほうが落ち着くだろ」
 私は迷って、それから頷いた。

 彼はきっと覗いたりする人じゃないと思う。しょっちゅうからかわれて彼への印象はマリアナ海溝の底まで落ちているけど、命の恩人だ。海抜ゼロくらいにはしてあげようかな。

 手が届かないだろうからと彼はシャワーを下のホルダーに置いてくれて、シャンプーなどのボトルも全部下においてくれた。

 こういう気遣いができる人だから営業成績がいいんだろうな。緊急事態でも、あれやってこれやって、と頭が回って世話をやいてくれるなんて、本当はすごくいい人なのかも。

 そう思いながらコックをひねるけど、硬くて大変だった。子供ってこんなに力がないんだ。

 シャワーを終えて出ると、床に置かれたかごに入っていたタオルで体を拭く。そのあと、パジャマ用にと置いてくれた彼のTシャツを着た。大きくて、まるでぶかぶかのワンピースだ。

 部屋に戻ると、彼は私を見て苦笑した。
「パジャマも買うべきだったか」
「いいよ。大丈夫。ドライヤー貸してほしい」

「俺が乾かしてやるよ」
「自分でやるよ」
「やりづらいだろ。素直に言うこと聞いとけ」

 彼は私を連れて洗面所に戻り、高い位置にあったドライヤーを手にした。
 私の髪をかわかしたあとは彼がシャワーを浴びに行った。

 リビングにひとりになって、ため息をつく。
 どうしてこんなことになったんだろう。

 まさか「鎖骨を堪能していられますように」なんて願ったから?
 確かに彼の鎖骨は稀な逸品ではあるけれど。
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