イケメン医師は、私を骨から溺愛する
「最短でも二週間は煮るって。出汁にはならないよ」

 先回りして教えられてしまった。

「ほかの作り方は……とこれ以上はやめておいたほうがいいかな」

 彼にもデリカシーはあるらしい。どういう方法なのか気になるけど、聞かないほうが幸せだな。

「とにかく、標本を作るには骨身を削って作業する必要があるんだよ。骨だけに」

 得意げな彼に、私は真顔を向ける。

「え、今、笑うところ……」

 焦る忽那さんが面白くて、私はつい、ふふっと笑う。
 それで気をよくしたのか、忽那さんはさらに言う。

「この標本を作った方はかなりの高齢だそうだよ。老骨に鞭うって作ったのかな」

 骨にからめて話すのが気に入ったのかな、と私は彼を見る。

「骨を惜しんでたらよい骨格標本はできないんですね」
「「骨だけに」」

 ふたりの声が重なって、私たちはくすくすと笑う。

「あら、忽那さん!」

 聞いたことのある声に振り返ると、いつかの美人女医がいた。確か、琴香さん。私服も決まってる。口元には微笑をたたえ、背筋をピンと伸ばして歩いてくる。相変わらずの美女ムーブ。ほれぼれする。

 彼女と比べると、自分はずいぶんと無骨な感じがしてしまう。

「冴島さん」

 忽那さんはあからさまに嫌そうな顔をしている。
 私はその顔を見てから琴香さんを見る。

 おそらく、毎回この顔をされているだろうにめげない琴香さん。忽那さんの見立てより骨のある人なんじゃなかろうか。この前も手ひどく断られていたのに、こんなところまで追いかけてきて、すごいよ。
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