Secret Happiness Kiss/シークレットハピネスキス
「ごちそうさま。ありがとう鈴華ちゃん」
「あー、美味しかった」
「作ってくれてありがとね。頼んで良かったよ。久しぶりに美味しいご飯を食べた気がする」
「え? 普段皆さんは何を食べているんですか?」
「去年からバンドの収入とバイトで、4人で生活日払って住んでいるんだ。もちろん親には全員許可は貰っているよ。それで最近は、唯一料理が出来るアツシが、夜女の子と遊びに行ってくるって言って出かけるから、手料理を食べたのは久しぶりなんだよ」

 アツシはどうやら女好きで遊び人らしい。通りでやり慣れている訳だ。彼の色気にやられそうになった事を反省しながら話しを聞いていたが、マサトが悲しそうな面持ちで呟く。

「前は桜菜(さな)が家に来て料理してくれたからなぁ……また食べたいなぁ」

 皆が暗い顔に変わるとしばらく沈黙が続いた。その時ひらめいた顔でユキトが話す。

「鈴華さん! またご飯作ってよ。もし良ければ、だけど……」
「それは良い! 良ければ俺達の分も頼むよ。しっかり払うから」

 正直悩む……また食べたいと言ってくれて嬉しい反面、体調の心配もある。
 でもこの縁を大事にしたい。私は体調のことや現状。ライブを見てもう一度頑張ろうと歩き出したことを伝える。

 真剣な顔つきで親身になって、3人は話しを聞いてくれた。
「ごめんなさい! いきなり暗い話しちゃって……」
「いやいや。そうかぁ……俺達のライブが救いになって嬉しいよ。あの曲はチハルが作ったんだよ」

 どこか遠い目をしながらチハルは語り出す。
「あの歌詞は、救えなかった自分への贖罪(しょくざい)の歌詞なんだ。出来なかったことへの反抗心で書いたっていえば伝わるかなぁ? だからそう思ってくれて救われたよ」

 話しを聞いて胸が苦しくなる。ステージのチハルは、真剣な顔つきで遠くの誰かを見ているように感じる。その誰かは、チハルが救いたかった人なんだと思うと、目が潤み、こぼれそうな涙をギュッとこらえた――チハルの心の中は、その誰かの想いでいっぱいなのに、チハルの遠くを見つめる目は、今近くで見ると涙を必死に堪えているように見える。それなのに、私が泣くのは違うと思い強く我慢した。

 沈黙がしばらく続くと、ユキトは「パッン!!」と両手の手のひらを打ち鳴らす。
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