Secret Happiness Kiss/シークレットハピネスキス
◇◇◇
9月になり、事故から半年が経過する。意識はまだ目覚めない。
桜菜の母親に、以前貯めたお金を封筒に入れて渡したことがあった。個室は値段が高いが、人と関わるのが怖い桜菜が目覚めたとき、辛い気持ちにならないようにお金を渡して頼み込んだ。
その時桜菜の母親は、お金を受け取らないで告げる「桜菜の将来使うかも知れない学費などの貯金はまだ使っていないから、お金は心配しないで良いからね。私達も病室は個室が良いと思っているから大丈夫だよ。いつも支えてくれてありがとね」と涙を流しながら伝えられて、胸が苦しかった。この貯めたお金は、手がつけられなくて押し入れの中に今もしまっている。
今日も彼女がいる病室のドアを開ける。すると、目の前に担当医の姿があった。
この半年間、ずっと心に引っかかっていたことがあり、意を決して声を掛ける。
「先生。少し聞きたい事があるのですが……お時間いいですか?」
「良いですよ、チハル君」
桜菜が以前「辛いことがあって、一時期消えてしまいたい」と思っていたことを話した。以前、先生は事故の強いショックが原因だと話していた。もしかしたら桜菜の辛い過去が、目が覚めない原因に関係していると思ったからだ。
話しを聞いた医師は、深く考えたあとに話し始める。
「もしかしたら桜菜さん本人の、生きようとする心の問題かもしれないね」
先生は慎重に言葉を選んで続きを話そうとしていたが、その時ポケットの端末から音が鳴り、急用で病室を出てしまった。
桜菜を見つめながら考え込んでいると、あの時の会話をふと思い出す。
『チハルのベース好きなんだよね。心が安心するっていうか、まるでチハルに包まれているみたいに感じる』
そのやり取りを思い出し、病室に来るたんびに、大好きと言ってくれた音楽を録音して流した――そうしたら、いつか目が覚める気がして願いを込めながら録音した。
そんな日々が続いた時に、バンドの新曲を作ることになった。
皆でテーマを決めて意見を出し合う中、僕は立ち上がって、決意を決めながら話し始める。
「今回の新曲、全て任せてくれないかな」
アツシ以外は、新曲担当のリーダにして、バンドメンバー全員で考える方が良いと意見が出たが、アツシは違った。
「まぁ良いんじゃない? やるだけやって考えれば」
***【主人公 鈴華視点】
「そして11月。鈴華さんが初めて来たライブの時に、新曲のDestroy the Pain(辛い気持ちをぶっ壊す)を披露したんだ。今も目覚めない暗闇にいる桜菜を救い出す為の歌をね」
私はその話を聞いて前に言われたことを思い出す。
『あの歌詞は、救えなかった自分への贖罪《しょくざい》の歌詞なんだ。出来なかったことへの反抗心で書いたっていえば伝わるかなぁ? だからそう思ってくれて救われたよ』救われた本当の意味が今日のチハルの話しで分かり、私の胸がギュッと苦しくなった。
「ごめんね。関係ない話しもいっぱい話した気がするよ。でも聞いてくれてスッキリした」
話しを聞き終えてしばらくすると、桜菜さんに挨拶をして病室を出た。二人きりの大切な時間を邪魔したくなかったから。
次にチハルに会ったのは、スカウトが来る日のスタジオだった。まさかここでトラブルが起きるとは思いもしなかった。
9月になり、事故から半年が経過する。意識はまだ目覚めない。
桜菜の母親に、以前貯めたお金を封筒に入れて渡したことがあった。個室は値段が高いが、人と関わるのが怖い桜菜が目覚めたとき、辛い気持ちにならないようにお金を渡して頼み込んだ。
その時桜菜の母親は、お金を受け取らないで告げる「桜菜の将来使うかも知れない学費などの貯金はまだ使っていないから、お金は心配しないで良いからね。私達も病室は個室が良いと思っているから大丈夫だよ。いつも支えてくれてありがとね」と涙を流しながら伝えられて、胸が苦しかった。この貯めたお金は、手がつけられなくて押し入れの中に今もしまっている。
今日も彼女がいる病室のドアを開ける。すると、目の前に担当医の姿があった。
この半年間、ずっと心に引っかかっていたことがあり、意を決して声を掛ける。
「先生。少し聞きたい事があるのですが……お時間いいですか?」
「良いですよ、チハル君」
桜菜が以前「辛いことがあって、一時期消えてしまいたい」と思っていたことを話した。以前、先生は事故の強いショックが原因だと話していた。もしかしたら桜菜の辛い過去が、目が覚めない原因に関係していると思ったからだ。
話しを聞いた医師は、深く考えたあとに話し始める。
「もしかしたら桜菜さん本人の、生きようとする心の問題かもしれないね」
先生は慎重に言葉を選んで続きを話そうとしていたが、その時ポケットの端末から音が鳴り、急用で病室を出てしまった。
桜菜を見つめながら考え込んでいると、あの時の会話をふと思い出す。
『チハルのベース好きなんだよね。心が安心するっていうか、まるでチハルに包まれているみたいに感じる』
そのやり取りを思い出し、病室に来るたんびに、大好きと言ってくれた音楽を録音して流した――そうしたら、いつか目が覚める気がして願いを込めながら録音した。
そんな日々が続いた時に、バンドの新曲を作ることになった。
皆でテーマを決めて意見を出し合う中、僕は立ち上がって、決意を決めながら話し始める。
「今回の新曲、全て任せてくれないかな」
アツシ以外は、新曲担当のリーダにして、バンドメンバー全員で考える方が良いと意見が出たが、アツシは違った。
「まぁ良いんじゃない? やるだけやって考えれば」
***【主人公 鈴華視点】
「そして11月。鈴華さんが初めて来たライブの時に、新曲のDestroy the Pain(辛い気持ちをぶっ壊す)を披露したんだ。今も目覚めない暗闇にいる桜菜を救い出す為の歌をね」
私はその話を聞いて前に言われたことを思い出す。
『あの歌詞は、救えなかった自分への贖罪《しょくざい》の歌詞なんだ。出来なかったことへの反抗心で書いたっていえば伝わるかなぁ? だからそう思ってくれて救われたよ』救われた本当の意味が今日のチハルの話しで分かり、私の胸がギュッと苦しくなった。
「ごめんね。関係ない話しもいっぱい話した気がするよ。でも聞いてくれてスッキリした」
話しを聞き終えてしばらくすると、桜菜さんに挨拶をして病室を出た。二人きりの大切な時間を邪魔したくなかったから。
次にチハルに会ったのは、スカウトが来る日のスタジオだった。まさかここでトラブルが起きるとは思いもしなかった。