後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

32. 再会の喜びと涙

 その姿が目に飛び込んできたとき、レイラは頭の中が真っ白になった。

 汗と泥に汚れすすけた服。
 記憶の中よりも伸びた長い髪。 
 無精ひげに覆われた顔は蓄積した疲労で随分草臥れて見えた。

 それでも、見た感じはひどい傷がある様子もない。
 少なくとも、見えるところは一つも欠けることなくそろっているし、疲れた表情ではあるものの仲間に囲まれてほっとしたように笑っていた。

 胸の奥から込み上げてくる激情を飲み込むように歯を食いしばり、最後の距離を駆け抜けるレイラをすれ違う人たちが驚いたように見ているけれど、そんな視線に頓着している余裕など、どこにもなかった。

(後、少し……。もうちょっと!)
 息が苦しい。
 久しぶりの全力ダッシュで胸が張り裂けそうだし、疲労のたまった足がもつれてしまいそうだった。 
 それでも、足を止めるなんて思いもつかなかった。
 一分でも一秒でも速く、相手の元へとたどり着くことしか考えられなかった。

「マリオ――ン!!」
 声が飛び出したのは、愛しい存在へ指先が届く二メートル前で。
「レイラ?!」
 その声に驚いたように振り返ったマリオンの目が大きく見開かれる。

 無意識のうちに広げられた腕の中に、レイラは飛びこんだ。
 勢いに少しよろめいたものの、マリオンはその体を大切に抱きしめた。

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