後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「マリオン!どこにいたの?怪我は?どうやって戻ってきたの?」
「レイラ!なんでこんな所にいるんだ!?城で待っていると思っていたのに!?」
 そうして顔を合わせた途端、同時に相手への質問が飛び出して、一瞬沈黙が生まれた。

「それはあなたが心配で、居ても立っても居られなくて」
「ケガはないよ。森にすむ人たちに助けられたんだ」
 さらに同時に相手の質問に答えようとするものだから、声がぶつかって訳が分からなくなっている。

「二人とも落ち着け。すっごく見られてるぞ?」
 今度は互いに「先にどうぞ」と譲り合いアワアワしている2人に、横から声がかかった。

「フィリアスさん!久しぶりです」
 振り返った先にあきれ顔のフィリアスが立っていて、レイラはハッと我に返った。

「少し落ち着いてください、レイラ様」
 そこに苦虫を噛み潰したかのような顔でユリアがゆっくりと歩いてくる。

 レイラに声をかけにきたユリアは、走り出した主人に最初はどうにか着いて行こうと頑張っていたのだが、すぐに振り切られて置いてけぼりになってしまったのだ。
 行き先は分かっていたので、その後は諦めて無理のない速度で向かったのだった。

「すでにマリオン様ご帰還の伝令が、前線の司令官迄走っています。戻ってこられる間に、身なりを整えて一息ついていた方が良いでしょう。どうぞ、お連れ様共々おいでください」
 そして、出来る侍女の顔で次の行動を促す。

「レイラ様も、どうかその間に身だしなみと心を整えてください。ここから先は、医師助手ではなく元の立場へと戻っていただきますよ」
「はい!」
 言外にしっかりしろと言われて、レイラは反射的にマリオンの腕から飛び出し背筋を伸ばした。
 一人になったマリオンが、寂しそうに空っぽの腕をワキワキさせていたけれど、レイラは侍女モードになったユリアに逆らう事ができなかった。

 その後、侍従に促されて連れ去られていくマリオンの背中を、寂しそうに見送るレイラをユリアがそっと押した。
「マリオン様はこれから、湯浴みをして身だしなみを整えた後、医師による診察が入ると思います。その後にお話しする時間は取れるので、用意して待ちましょう」
「……うん」
 コクリと頷いて、レイラはギュッと自分の手を握り締めた。

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