後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

33. 戦争の終わりは唐突に

 疲弊しきった国の現状に目を背け、目先の享楽をむさぼっていた中央の貴族や王族たちが気がついた時には、その波は直ぐ目前にまで迫っていた。
 
「おれ達は都合のいい物なんかじゃない!」
「守ってくれない王侯貴族など不要だ!!」
 津波のように押し寄せるのは、クワや鎌を持った民衆が混じる寄せ集めの軍勢で、それでも数は力だった。

 腐敗の中にあっても、国の行く末を憂う良心ある貴族は存在していた。
 飢饉に襲われた地区の領主を中心にひっそりと手をつないだ者達が、慎重に根回しを進め反乱を起こしたのだ。

 旗印は、王の耳に痛い言葉を告げる事で辺境へ幽閉されていた王弟の息子だった。

 確かな血筋と清廉な性質を武器に味方を増やし、目先の利益を求めて戦場ばかりに向けられた国軍の目をかいくぐった手腕は見事の一言に尽きた。
 もともと王弟の血筋が軍を任されていたこともあり、最低限城に残されていた兵力を取り込む事に成功していたのも大きい。

 かくして、唐突に現れたように見えた反乱軍は、ほとんど抵抗を受ける事もなく、王城に籠る王その人のもとまで、一息に駆け上がった。
「国を亡ぼす愚王はいらない!」
 王の頭上から奪い取った王冠を天に掲げ勝利を宣言した姿を、集まった群衆は熱狂でもって迎えた。

 そうして、暗黒の時代は幕を閉じたのである。




< 109 / 124 >

この作品をシェア

pagetop