後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「戦争が終わった?」
医師の指示のもと負傷兵の包帯を取り替えていたレイラは、茫然とつぶやいた。
日々送られてくる負傷兵が、自国の民から捕虜となった隣国の兵へと変わってくることで、戦況の優位性は感じていたけれど、あまりにも唐突なその一報に呆然となる。
医療団の一人として前線にたどり着いてから、三か月が経過しようとしていた。
マリオンが帰ってきた後も、レイラは変わらず薬師として働いていた。
最初こそ、おそれ多いとどよめいていた周囲も、変わらぬレイラの様子にすぐに慣れた。
もともと、分け隔てなく手を差し伸べクルクルと働くレイラは周囲に好意的に受け入れられていた為、「まあ、レイラちゃんだし」となんとなく納得してしまったのだ。
「相手国で内乱が起こったんだよ! 王城にいた王侯貴族は捕まって牢に入れられたって話だ!」
終戦の報告を持って飛び込んできた伝令は、笑顔を隠せないまま言葉を返す。
「もともと戦場の士気も低下してきたところで、戦争をけしかけていた王様がいなくなったんだ。戦争を続ける意味ももうないんだろうさ!」
男の大きな声に聞き耳を立てていた負傷兵たちも騒めきだす。
「戦争が終わった?」
「本当なのか? なら、……家に戻れる?」
「もう闘わなくていいんだ! 故郷へ帰れる!!」
かみしめる様な声や歓声まで。
そこかしこで上がる声は、喜びにあふれていた。
「こら、落ち着かんかい。せっかく良い知らせが来たというのに、ここで暴れては傷が開いて帰れなくなるぞい!」
レイラと共に診察していた老医師が慌てて、飛び跳ねようとする患者を押さえる。
そこ以外でも、はしゃいで両手を振り上げた瞬間に痛みが走り蹲ったり、歓声が悲鳴に変わったりする患者がいて、レイラは目を丸くした。
「先生の言う通りですよ。故郷に帰るにも移動しなくてはいけないんですから、傷をしっかり治さないと!」
「ああ! 分かっているとも!」
「俺、この間子供が生まれたばかりなんだ。やっと顔を見る事ができる……」
窘めるレイラにも、嬉しそうな声が返ってくる。
抑えきれない喜びの表情に、レイラもまたじわじわと喜びが湧き上がってくるのを感じる。
(そうだわ。戦争が終わったなら、もうマリオンが命の危険にさらされる事もなくなる。戻ってくるんだわ!)
無事に帰還したマリオンは、数日砦で体を休めた後、傷が完全に癒えてからにしてはと押しとどめようとする周囲の手を振り切って、すぐに最前線へと戻っていってしまった。
「先頭に立って戦う事は出来なくとも、同じ戦場にいるだけで皆の士気が上がる。単なる置物だとしても、それほどに王家の血というのは価値があるんだよ」
気負う様子もなく、淡々と語るマリオンに、レイラは引き留めたくて伸ばした手を下ろした。
マリオンの王族としての覚悟を邪魔することなど出来ないと思ったからだ。
「まだ、完治したわけではないのだから、無理はしないでね。私もここで、私にできることを頑張るから」
精一杯の笑顔で送り出した事を後悔はしていないけれど、いつだって心は不安でいっぱいだった。
(あぁ!早く会いたい!会って、元気な姿を確かめたいわ)
歓喜に沸く病室で飛び上がろうとする患者を窘めながら、レイラもひっそりと喜びを噛み締めていた。
医師の指示のもと負傷兵の包帯を取り替えていたレイラは、茫然とつぶやいた。
日々送られてくる負傷兵が、自国の民から捕虜となった隣国の兵へと変わってくることで、戦況の優位性は感じていたけれど、あまりにも唐突なその一報に呆然となる。
医療団の一人として前線にたどり着いてから、三か月が経過しようとしていた。
マリオンが帰ってきた後も、レイラは変わらず薬師として働いていた。
最初こそ、おそれ多いとどよめいていた周囲も、変わらぬレイラの様子にすぐに慣れた。
もともと、分け隔てなく手を差し伸べクルクルと働くレイラは周囲に好意的に受け入れられていた為、「まあ、レイラちゃんだし」となんとなく納得してしまったのだ。
「相手国で内乱が起こったんだよ! 王城にいた王侯貴族は捕まって牢に入れられたって話だ!」
終戦の報告を持って飛び込んできた伝令は、笑顔を隠せないまま言葉を返す。
「もともと戦場の士気も低下してきたところで、戦争をけしかけていた王様がいなくなったんだ。戦争を続ける意味ももうないんだろうさ!」
男の大きな声に聞き耳を立てていた負傷兵たちも騒めきだす。
「戦争が終わった?」
「本当なのか? なら、……家に戻れる?」
「もう闘わなくていいんだ! 故郷へ帰れる!!」
かみしめる様な声や歓声まで。
そこかしこで上がる声は、喜びにあふれていた。
「こら、落ち着かんかい。せっかく良い知らせが来たというのに、ここで暴れては傷が開いて帰れなくなるぞい!」
レイラと共に診察していた老医師が慌てて、飛び跳ねようとする患者を押さえる。
そこ以外でも、はしゃいで両手を振り上げた瞬間に痛みが走り蹲ったり、歓声が悲鳴に変わったりする患者がいて、レイラは目を丸くした。
「先生の言う通りですよ。故郷に帰るにも移動しなくてはいけないんですから、傷をしっかり治さないと!」
「ああ! 分かっているとも!」
「俺、この間子供が生まれたばかりなんだ。やっと顔を見る事ができる……」
窘めるレイラにも、嬉しそうな声が返ってくる。
抑えきれない喜びの表情に、レイラもまたじわじわと喜びが湧き上がってくるのを感じる。
(そうだわ。戦争が終わったなら、もうマリオンが命の危険にさらされる事もなくなる。戻ってくるんだわ!)
無事に帰還したマリオンは、数日砦で体を休めた後、傷が完全に癒えてからにしてはと押しとどめようとする周囲の手を振り切って、すぐに最前線へと戻っていってしまった。
「先頭に立って戦う事は出来なくとも、同じ戦場にいるだけで皆の士気が上がる。単なる置物だとしても、それほどに王家の血というのは価値があるんだよ」
気負う様子もなく、淡々と語るマリオンに、レイラは引き留めたくて伸ばした手を下ろした。
マリオンの王族としての覚悟を邪魔することなど出来ないと思ったからだ。
「まだ、完治したわけではないのだから、無理はしないでね。私もここで、私にできることを頑張るから」
精一杯の笑顔で送り出した事を後悔はしていないけれど、いつだって心は不安でいっぱいだった。
(あぁ!早く会いたい!会って、元気な姿を確かめたいわ)
歓喜に沸く病室で飛び上がろうとする患者を窘めながら、レイラもひっそりと喜びを噛み締めていた。