後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

番外編 ババ様のおはなし

「ババ様、ババ様、お話聞かせて」
 押し寄せてくる患者も数日すれば落ち着いて、ふと暇になる時間ができるようになったころ。

 小さなテントの前で日向ぼっこをしていたババ様の元に、小さな子供たちが集まっていた。

 無邪気に慕う子供たちに、ババ様はしわに埋もれた目を細めて嬉しそうに笑う。
 初めて会った頃は暗い目をして、笑う体力もなかった子供達が、今では楽しそうに駆け寄ってくる。

 その姿を見れただけで、長い時間馬車に揺られた苦労も報われた気になるというものだ。

「いいよ。どんな話が聞きたいんだい?」
 そっとしわがれた手を伸ばして、近くの子供の頭を撫でながら尋ねるババ様に、子供達は無邪気に強請った。

「森の小さな女の子のお話がいい」
「え~~。勇敢な騎士様の話がいいよ!」
「わたしね、踊りの上手な女の子のお話が聞きたいの」

 次々に飛び出すリクエストに、おやおやとババ様が目を細めた。
 遊び疲れて座り込んだ子供たちの暇つぶしにと聞かせた物語は、しっかりと子供たちの心をつかんでいたらしい。

「そうだね、それじゃあ今日は、森の小さな女の子の話をしようかねぇ」
 ニンマリと笑いながら、ババ様は小さなリュートを取り出して胸に抱えるとボロンと弾きだした。
< 116 / 124 >

この作品をシェア

pagetop