後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
柔らかな音色に彩られて、囁くように語られる物語に、子供達は熱心に耳を傾ける。
既に幾度も聞いた話なのに、何度聞いてもババ様の語る物語は子供たちを夢中にさせた。
そして、「森を走り回るってどんな気持ちだろう?」「魔女の知恵ってどんなかな?」「困った時の呪文ってなに?」と想像の翼を広げるのだった。
丁度語り終わった時に、病人が来たとババ様が呼ばれて、お話会はお開きになった。
それぞれに散っていく子供たちの中で、小さな女の子の話をねだった少女がそっとババ様に近づいて耳元で囁いた。
「ババ様が森の魔女なのでしょう?だって、魔法のようにお薬をつくれるし、何でも知っているもの」
少し緊張したように見つめる少女に、ババ様はにんまりと笑うと、シーッと指先を唇に当てた。
「知らんふりをしておいで。じゃないと、おまえを連れて行かないといけなくなるからね」
少女は目を丸くした後、真剣な顔で頷くと走り去っていった。
「ババ様、子供を脅しちゃダメじゃないか」
「あのくらいの年頃には、ちょっとした秘密と恐怖は必要なんだよ」
呼びに来た青年が呆れたような目を向けるけれど、ババ様は悪びれない顔で肩を竦めて見せた。
「まったく。ついてくるって言われたらどうする気だったのさ」
「来やしないよ。これから、ようやく安心して子供時代を送れるってのに、親元を離れるもんか」
見送る視線の先で待っていた母親の胸に飛びこんで行く少女を見て、ババ様はケラケラと笑いながらリュートをもう一度ボロンと鳴らした。
「あの子の母親は肺の病にかかってたんだけど、薬が間に合ったからね。あと半月もすればすっかり元気になるだろうさ」
咳の止まらない母親を、目に一杯の涙をためて一生懸命支えていた姿を思い出して、ババ様は満足そうに頷いた。
「さぁて、もうひと仕事しようかね。さっさと患者の元に案内しな!」
「ババ様が遊んでいたんじゃないか」
薬箱を押し付けて急かすババ様に、青年が唇を尖らせながらも素直に先に立って歩きはじめる。
『ババ様が行くよ~。あなたの町に……』
どこかから聞こえる歌声に、ババ様はニンマリ笑って歩き出した。
既に幾度も聞いた話なのに、何度聞いてもババ様の語る物語は子供たちを夢中にさせた。
そして、「森を走り回るってどんな気持ちだろう?」「魔女の知恵ってどんなかな?」「困った時の呪文ってなに?」と想像の翼を広げるのだった。
丁度語り終わった時に、病人が来たとババ様が呼ばれて、お話会はお開きになった。
それぞれに散っていく子供たちの中で、小さな女の子の話をねだった少女がそっとババ様に近づいて耳元で囁いた。
「ババ様が森の魔女なのでしょう?だって、魔法のようにお薬をつくれるし、何でも知っているもの」
少し緊張したように見つめる少女に、ババ様はにんまりと笑うと、シーッと指先を唇に当てた。
「知らんふりをしておいで。じゃないと、おまえを連れて行かないといけなくなるからね」
少女は目を丸くした後、真剣な顔で頷くと走り去っていった。
「ババ様、子供を脅しちゃダメじゃないか」
「あのくらいの年頃には、ちょっとした秘密と恐怖は必要なんだよ」
呼びに来た青年が呆れたような目を向けるけれど、ババ様は悪びれない顔で肩を竦めて見せた。
「まったく。ついてくるって言われたらどうする気だったのさ」
「来やしないよ。これから、ようやく安心して子供時代を送れるってのに、親元を離れるもんか」
見送る視線の先で待っていた母親の胸に飛びこんで行く少女を見て、ババ様はケラケラと笑いながらリュートをもう一度ボロンと鳴らした。
「あの子の母親は肺の病にかかってたんだけど、薬が間に合ったからね。あと半月もすればすっかり元気になるだろうさ」
咳の止まらない母親を、目に一杯の涙をためて一生懸命支えていた姿を思い出して、ババ様は満足そうに頷いた。
「さぁて、もうひと仕事しようかね。さっさと患者の元に案内しな!」
「ババ様が遊んでいたんじゃないか」
薬箱を押し付けて急かすババ様に、青年が唇を尖らせながらも素直に先に立って歩きはじめる。
『ババ様が行くよ~。あなたの町に……』
どこかから聞こえる歌声に、ババ様はニンマリ笑って歩き出した。