後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 マリオンの供述通りの容姿に、患者に合わせて処方された薬草の知識。
 側室の名前は「レイラ゠アントラルド」。
 年齢16歳。

「み〜つけた!って喜ぶには地雷すぎだろ。白い結婚みたいだけど、父親の奥さんじゃん!義理の母親じゃん!!」

 見つけてしまった事実はあまりにも重く、友人にどう伝えたものかと二の足を踏むものだった。
 これならば、マリオンの立ち位置から考えたら、側室付きの侍女の方がまだ色々マシである。

「しかも、今回の件で下手したら国王様の気をひくんじゃないか?マリオンの言葉通りなら、すごい美人に成長したみたいだし……。まぁ、嫌がる女性に手を出すような方ではないけど………」

 現国王は、名君と呼ばれる人だが、「英雄色を好む」を地でいく人物でもある。
 尤も、「女は惚れさせてこそ」と公言している人でもあるため、後宮に入ったから即手つきというわけでもなく、政治的意味合いで置いている女性も一定数いるし、「下賜」される女性も多い。

 基本、女性の意思を優先させようとする、よく言えば大らかな人物であり、だからこその隙を突かれての不正ではあったのだが。

 かの方の言い分としては「なにも言わないなら現状満足してるんだろう」である。
 つまり、どうにかして直談判していれば、レイラの苦境は速やかに解消されていたものだったのだ。

 だが、後ろ盾の薄い当時12歳の少女にそんな事情を知る術はなく、唯一のお付きの侍女も他国の事情など分かるわけもない。

 後宮の真面な人々は、突如増えた住人の対応に追われて、ひっそりと隅に追いやられた少女にまで目が届かなかった。

 頼るべき実家は、とりあえずそこに「送り出した」事実があれば良かっただけで、少女の行く末になど興味もなかった。

 結果、ある意味不幸なれしていた少女は、耐えてしまう事を選択する。
 そうして、過ぎ行く日々の中で訴えるべき伝手を手に入れた頃には、現状の不満は解消されて満足しており、訴えるべき事柄は無くなってしまっていたのだ。

 様々な要因が重なりの「今」だった。


「逆境を乗り越えて頑張った少女に、ご褒美的な何か、ないかなぁ〜。願いを1つ叶える、とかだと都合いいんだけど……」
 適当な事をブツブツ呟きながら、フィリアスは結果を伝えるべく重い足取りで歩き出した。

 まさか現実逃避気味につぶやいていた言葉がそう遠くない未来に現実になるなんて思いもせずに。




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