後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

15. 縮まる2人の距離

「マリオン・・・なんで・・」
 夜にマリオンと会う事は無かったから、レイラは、一瞬それが月の見せた幻なのではないかと疑った。

 だけど、ゆったりとした足取りで近づいてくるその姿は、どう見ても幻ではなくて、座り込んだレイラが立ち上がれるようにと差し伸べられた手は、触れれば温りを伝えてくる。

「どうして、こんな時間にここにいるの・・・?」
 だから、もう一度、同じような言葉を重ねた。
 いるはずのない人が、ここにいるのが、とても不思議だったから。

「・・・眠れなくて・・・」
 つないだ手に力を込めて引き寄せれば、華奢なレイラは、ふわりと簡単にマリオンへと引き寄せられてしまう。

「気が付いたら、ここに来てて・・・・」
 マリオンは、そのまま柔らかく抱きしめる。
 触れるか触れないかの、とてもやさしい抱擁。
 
 きっと、レイラがほんの少しでも身じろぎしたらほどけてしまうほどの・・・・・。

「レイラを見つけた」
 とても幸せそうな。
 大切なものをかみしめているかのような優しい声に、レイラの頬が赤く染まる。
 胸の奥から込みあげてくる何かをどう言葉にしていいか分からなくて、レイラは、目を伏せてほうっと吐息を一つこぼした。

 そこには、隠しきれない熱がこもっていた。

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