後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 ささやかなはずのそれに、マリオンは、たちまち囚われてしまう。
 優しく背中を囲っていた腕が動いた。
 片方は、薄紅に染まるレイラの頬に。もう片方はその背を滑り腰へと・・・。

 優しいのになぜか抗えない力で、俯きがちになった顔をそっとあげられる。
 見つめあう瞳の中に、今まで見たことの無い炎が揺らめいているように見えて、レイラは息を飲んだ。
 そして、その炎に押されるように、そっと瞼を落ろす。

 長い睫毛が頬に影を落とした。
 それを見た後、マリオンは、ゆっくりと何かに引き寄せられるように首を傾ける。

 ふわり、と唇に柔らかな熱を感じた。

 すぐに離れてしまった温もりを追いかけるように、レイラの瞼があがる。
 そして、かすみそうなほどすぐ近くに綺麗な碧色を見つけた。
 吸い込まれてしまいそうな、深い深い青………。

 次の瞬間。

 マリオンの腕に力がこもり、痛いくらいに強く抱きしめられたレイラの背が僅かに反った。
 同時に、唇へと再び熱が押し付けられる。

(ああ・・・あつい・・・・)
 抱きしめられた体も。触れる唇も・・・。
 触れた場所全てから、まるで炎のような熱が移り、レイラを飲み込んでいくようだった。

 幾度も繰り返される触れるだけの口づけが、いつの間にか食むような動きに変わるころには、レイラは熱に翻弄されすぎて、自分で立っている事すら怪しくなっていた。

 すがるように、マリオンの胸元を握りしめれば、クスリと笑う気配が伝わってきた。
「・・・かわいい・・」
 唇の熱が伝わってくるほどの距離で、そっと囁かれる。

 その吐息の熱さに、レイラは、さらに自分の体温が上がったかのような気がした。
 くらくらとめまいがして、目を開けることも叶わない。

 自分の腕の中で、赤く頬を染めて目を閉じているレイラに、マリオンは、たまらず再び口づけを落とす。

 初めて触れたレイラの唇はとても甘くて、いつまでも触れていたいと思う。
 いつもよりも赤みを増した唇は、マリオンの熱が移ったかのように燃えるように熱く、思わず確かめるようにぺろりと舐めた。

 そうすれば、まるで熱を逃がすかのように、ハクリとレイラの唇が開く。
 その隙間からかすかに覗く白い真珠貝のような歯と小さな舌に、誘われるようにマリオンは口づけを深めた。
 驚いたようにびくりと震えたレイラを、逃がさないようにさらに深く抱きこむ。

 そうして満足したマリオンがようやくその腕を緩めた頃には、かわいそうなレイラは、すっかり熱に翻弄されて半ばその意識を失っていたのだった。





< 46 / 124 >

この作品をシェア

pagetop