後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「ごめん・・・うれしくて・・・・・やりすぎた・・・・・」

 ふわふわと熱に浮かされたようになっていた意識が戻ってきた時、レイラは、いつも休憩していた大樹の根元に座ったマリオンの膝の上にいた。

 横抱きにされ顔を覗き込んでいるマリオンの顔をぼんやりと見つめ返したレイラは、その言葉を聞いたとたんに自分に起こった先ほどまでのあれやこれやを思い出し、小さく悲鳴を上げた。

 湧き起こる羞恥に動くことも出来ず、真っ赤な顔で固まるレイラに、マリオンが困ったように笑う。
 つい、雰囲気に充てられて暴走した自覚があるだけに、少々気まずい。

 だがしかし。
 腕の中で小さく震えながら甘い声をあげる想い人の姿に、健全な青少年が、煽られないわけがない。
 しょうがない出来事だったのだ。

 とはいえ、意識混濁に追い込んだのは、どう考えてもやりすぎだった。
 狭い世界しか知らなかった、ある意味純粋培養のレイラには、口づけだけとはいえ刺激が強すぎた。

(次は、もう少しゆっくり進めよう…)
 反省はしていても、まったく後悔はしていないマリオンは、殊勝な顔でそんなことを考えていた。

 一方、真っ赤な顔で固まっていたレイラは、ようやく顔を両手で隠すとマリオンの膝の上で小さく体を丸めるとモダモダと悶えていた。

 顔は隠されて見えなくなったけれど、髪の隙間から覗く耳は真っ赤で、レイラが恥ずかしがっていることは一目瞭然だった。

 それなのに膝の上から逃げようとする様子はないのだから、マリオンは、レイラが愛おしくてしょうがない。

「レイラ・・・ごめん・・・」
 謝罪の言葉を口にしながらも、その声には喜色が滲んでいて、思わずレイラは、顔をあげてしまう。

「もう!ちっとも反省してない!」
 怒りながら、ぽかぽかと抱きこまれた胸元を殴りつけるものの、赤い顔に涙目では、これっぽっちも迫力はない。むしろ、可愛いだけである。

「もう!!私怒ってるのよ?なんで笑ってるのよ!」
 思わずにやけるマリオンに、赤い顔で怒るレイラ。
 どこからどう見てもバカップルなやり取りは、その後しばらく続くのであった。



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