後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「部屋に帰ってから、急すぎたと反省したんだ」
 ようやく頬の熱さが治まり落ち着いてきたレイラに、マリオンも笑みを消して、そう言った。

「俺は、レイラの正体を先に知っていたから、心を決める時間もあった。だけど、レイラはあの瞬間まで、俺が何者かを知らなかったんだろう?」
 少し苦い表情でそう言って、マリオンは俯く。

「戸惑うのは、当然だ。だけど、レイラの口から俺を拒絶する言葉を聞きたくなくて、半ば強引に押し通した」
 膝の上から強引に逃げて隣へと座っていたレイラの手を握りしめているマリオンの指に力が入った。

「好きだと言ってもらえたけど……、もしかして、嫌だったのかと………。ただ流されて断れなかっただけじゃないかと……。1人になったら不安になって………だから「愛してる」と声が聞こえてタガが外れた」
 俯くマリオンの横顔が言葉を重ねるごとにションボリとしてきて、レイラはなんだか可笑しくなってしまった。 

 あんなにキラキラの王子様の姿で、自信満々に愛を囁いていたのに、1人になった途端に不安になるなんて。

(もしかして、あの時はマリオンも夢中だったのかな?)

 心を決める時間はあったと言ったけれど、やっぱりどこか信じたくない気持ちもあって、驚いて焦っていたのだろう。

(だって、私、立場的にはお義母様、だし)
 そう考えれば考えるほどに、なんだかどんどん可笑しくなってきて、レイラは気づけばクスクスと笑っていた。

「私、最近、突然たくさんの情報が押し寄せてきて目が回りそうだったの。
 だってこの国に来てから、ほとんどの時間をユリアと二人ひっそりと暮してきたんですもの。
 それが、なんでか今になって不遇な扱いをされている側妃がいるって人が押しかけてきて。
 環境の改善を図ってもらえるのは、とてもありがたかったけど、その分騒がしくなって・・・・。
 それがやっといち段落したと思ったら、今日のアレでしょう?」

「・・・・それは・・・・・悪かった」
 何かを思い出すように少し遠い目をするレイラに、マリオンは何と言っていいか迷って、結局なにも思いつかずに小さく謝罪の言葉を口にした。
 ますますしょげてしまったマリオンに、レイラは、困ったように笑う。

「別に責めてるわけじゃないのに・・・。いいきっかけだったと思うのよ?だって、いつまでもこんな生活、続けられる訳ないってわかってたし」



< 48 / 124 >

この作品をシェア

pagetop