後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 そんな感じで交流が続き、今では、薬の受け渡しのついでに雑談をする仲である。

 後宮の外に出る事の出来ないレイラにとっては、貴重な情報源だったので、毎回時間の許す限り会話するように心がけていた。

 商人のほうも、若い娘の好奇心だろうと、気安く付き合ってくれる。
 会話のお供にとレイラの持ってくるお菓子が目当てかもしれないが・・・・・・。

 いつものように薬を渡しに行けば、傷薬と痛み止めをあるだけもらえないかと乞われた。
 不思議に思い、そんなにたくさん買い手があるのかと聞けば、最初の言葉へとたどり着くのである。

「ちょっと前に兵を増員しただろう?なんでも、もともと向こうさんの動きが怪しかったかららしいんだが、その予感が大当たりだったんだろうねえ。
 国境付近の村が襲われてかなりの数の被害が出たみたいだよ。
 たまたま巡回の兵士がいて大事にはならなかったみたいだけど、そんな事がもう2~3度起きてるって、もっぱらの噂だ。で、そっちの方面に医薬品を持っていったら需要があるんじゃないかと思ってね」

 クッキーをかじりながら話すマイクの横で、徐々にレイラの眉が寄っていく。
「兵士の中にも怪我人は出たの?」
 不安そうな顔に、マイクは首をかしげた。
 そうして、目の前の少女がこの城の住人であることを思い出す。

「なんだい?今回増兵された中にいい人でもいたのかい?」
「ええ・・・・っと、まあ・・・・」
 少し困ったような顔であいまいに頷くレイラの様子に(片思いか?)と納得して、内心にんまりとした。

 貴重な薬の取引相手である少女の、淡い想いがかわいらしく感じた。
(俺にもこんな純情な時期があったもんだ)
 今では人生の荒波にもまれてすっかり擦れてしまったけれど、人の恋路は応援したくなるものなのだ。

「まあ、詳しくは聞かないけど、気になるならそこら辺のこともそれとなく聞いてきてやるよ」
 行商のついでに人のうわさ話を集めるのは大得意である。商売には新鮮な情報が命なのだから。

「ありがとう。とりあえず、お薬取ってくるわね」
 真剣な顔で頷いて踵を返したレイラの背中を見送りながら、「若いっていいやねえ」と、マイクはのんきにつぶやいた。



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