後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
始まりは一地域の干ばつだった。
雨の量が減っている。
川の水量が少なくなった。
そんなささやかな報告から始まったそれは、うかうかしている間にあっという間に悪化していった。
生き物は、水無くしては生きていけない。
それは単純に人の話だけではなく、植物や家畜も同じだ。
水をやらねば作物は枯れるし、家畜は渇き死ぬ。
まず、影響が出たのは野菜や穀物などの作物。
収穫量が減り、値が上がるだけではなく、税を納められないと夜逃げを始める農民が増えてきた。
その段階で何らかの対策を行っていれば、まだどうにかなっていたのかもしれない。
だが、中央で暮らす王侯貴族にその深刻さが響く事は無く。
村が一つ消え、二つ消え。
気が付けば、辺境とはいえ大きな町ひとつが沈みかけていた。
ようやく中央が重い腰を上げた時には、一つの地域が飢饉の中にあった。
助けの手を伸ばそうにも、その頃にはじわじわと貯えを食いつぶしていた近隣の地区も、よそを救うほどの余裕はなくなっていた。
さらに、余裕がありながらも自身の腹が痛むのは嫌だとソッポを向いた貴族たちに、飢饉の波はジワリジワリと広がり続け、国の半分近くを飲み込むこととなる。
そこまで広がってしまえば、今更慌てたところでなにをしても焼け石に水だ。
民は飢え、国力は下がり、王の求心力は地に落ち始めた。
そこでプライドを捨て、救いを求めて隣国へと頭を下げればよかったのだ。
だが、長く続いた国の肥大したプライドがそれを良しとせず、「無いならばある場所から奪えばいい」という結論を弾き出した。
どう考えても「愚か」の一言でしかなかったが、過去の輝かしい栄光に裏打ちされた無駄なプライドがその目を曇らせたのだろう。
少ない良識のある貴族達は反対の声をあげたものの、自領の地からの声は遠く、中央の王の元には届かなかった。
タイミングも悪かったのだろう。
実質国を纏めていた宰相が、その頃、急な病に倒れていた。
もともと高齢なのもあって体調を崩しがちになり、後進を育てようと仕事を割り振っていて、干ばつの発生に気づくのが遅れ、その対応に追われる中のことだった。
この状況でのんきに王都に侍っている貴族の声などろくなものではないというのに、もともと面倒ごとを嫌い楽に逃げがちな傾向のあった王は、やすやすと甘言に乗ってしまった。
「我が国が苦境の中、のうのうと甘露を享受している隣国より奪って何が悪い」と・・・・。
実質的な飢えに襲われていた民は、こうして、さらに戦争へと連れ去られることになる。
不満の声は出たが、教養も情報も制限された平民にとって、「お偉い方々」の言葉は絶対だった。
「お前らが飢えているのは隣国が悪い事をしているからだ。これは正義のための戦いなのだ」
おきれいな言葉でコーティングされた説明を繰り返されることで、不満の矛先は簡単に隣国へと向いてしまう。
基本自分たちの住む土地を離れない平民にとって、遠い地域で起こった干ばつの情報など噂話程度にしか広がらないのだ。
混乱の中大きな声を張り上げられれば、そちらが主流になってしまうのは世の常だろう。
この戦に勝てば、国は豊かになる。
明日の食事の心配もなくなる。
後の無い人間の集団心理は恐ろしい。
こうして、隣国は沈むしかない泥舟を出航させたのだった。
雨の量が減っている。
川の水量が少なくなった。
そんなささやかな報告から始まったそれは、うかうかしている間にあっという間に悪化していった。
生き物は、水無くしては生きていけない。
それは単純に人の話だけではなく、植物や家畜も同じだ。
水をやらねば作物は枯れるし、家畜は渇き死ぬ。
まず、影響が出たのは野菜や穀物などの作物。
収穫量が減り、値が上がるだけではなく、税を納められないと夜逃げを始める農民が増えてきた。
その段階で何らかの対策を行っていれば、まだどうにかなっていたのかもしれない。
だが、中央で暮らす王侯貴族にその深刻さが響く事は無く。
村が一つ消え、二つ消え。
気が付けば、辺境とはいえ大きな町ひとつが沈みかけていた。
ようやく中央が重い腰を上げた時には、一つの地域が飢饉の中にあった。
助けの手を伸ばそうにも、その頃にはじわじわと貯えを食いつぶしていた近隣の地区も、よそを救うほどの余裕はなくなっていた。
さらに、余裕がありながらも自身の腹が痛むのは嫌だとソッポを向いた貴族たちに、飢饉の波はジワリジワリと広がり続け、国の半分近くを飲み込むこととなる。
そこまで広がってしまえば、今更慌てたところでなにをしても焼け石に水だ。
民は飢え、国力は下がり、王の求心力は地に落ち始めた。
そこでプライドを捨て、救いを求めて隣国へと頭を下げればよかったのだ。
だが、長く続いた国の肥大したプライドがそれを良しとせず、「無いならばある場所から奪えばいい」という結論を弾き出した。
どう考えても「愚か」の一言でしかなかったが、過去の輝かしい栄光に裏打ちされた無駄なプライドがその目を曇らせたのだろう。
少ない良識のある貴族達は反対の声をあげたものの、自領の地からの声は遠く、中央の王の元には届かなかった。
タイミングも悪かったのだろう。
実質国を纏めていた宰相が、その頃、急な病に倒れていた。
もともと高齢なのもあって体調を崩しがちになり、後進を育てようと仕事を割り振っていて、干ばつの発生に気づくのが遅れ、その対応に追われる中のことだった。
この状況でのんきに王都に侍っている貴族の声などろくなものではないというのに、もともと面倒ごとを嫌い楽に逃げがちな傾向のあった王は、やすやすと甘言に乗ってしまった。
「我が国が苦境の中、のうのうと甘露を享受している隣国より奪って何が悪い」と・・・・。
実質的な飢えに襲われていた民は、こうして、さらに戦争へと連れ去られることになる。
不満の声は出たが、教養も情報も制限された平民にとって、「お偉い方々」の言葉は絶対だった。
「お前らが飢えているのは隣国が悪い事をしているからだ。これは正義のための戦いなのだ」
おきれいな言葉でコーティングされた説明を繰り返されることで、不満の矛先は簡単に隣国へと向いてしまう。
基本自分たちの住む土地を離れない平民にとって、遠い地域で起こった干ばつの情報など噂話程度にしか広がらないのだ。
混乱の中大きな声を張り上げられれば、そちらが主流になってしまうのは世の常だろう。
この戦に勝てば、国は豊かになる。
明日の食事の心配もなくなる。
後の無い人間の集団心理は恐ろしい。
こうして、隣国は沈むしかない泥舟を出航させたのだった。