後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 その知らせは、ほぼ同時だった。

 ひとつは待ちかねていたババ様からの返事。
「おもしろい事を考えたね」との事で、協力してくれそうな心当たりに声をかけてくれるとの事だった。

 それなりの形ができたら連絡すると、受け取った手紙には懐かしいババ様の文字で書き記されており、レイラは嬉しさのあまりピョンと飛び上がってしまった。

 誰よりも心強い味方を手に入れて、きっとこの思い付きは、レイラが想像したよりも素晴らしい形になって帰ってくるだろうと信じる事ができた。

 その喜びをユリアにも伝え、王妃様にも報告するために面会を頼もうと手紙から顔をあげた時、少し強めのノックの音が響いた。

 いつもよりも強く速い音に、心臓がびくりと飛び上がる。
 素早く扉へと向かったユリアが、2,3やり取りをした後、振り返った。

「王妃様より、至急部屋へと来るようにとのお呼び出しです」
「え・・・?まあ、良いタイミングだけど・・・・・何かあったのかしら?」
 いつにない、急な呼び出しに、不安が忍び寄る。

「分かりません。直接伝えたいことがあるから部屋に来るようにとだけ・・・・。とりあえず、至急との事なので、そのままで参りましょう」
 ユリアに促されるまま、レイラは歩き出す。

 いつもなら、どれほど急ぎでも一時間ほどの余裕があり、その間に、着替えたり髪を整えたりする。
 別に変な格好をしているわけでもないのに、わざわざ改めて身支度を整えるのを面倒に感じていたレイラだが、いざ、それを省略されると違和感を感じた。

 なによりも形式を重んじる王宮の人々が、それを無視するなど、どう考えても普通ではない。

 ドキドキと早まる鼓動と共に、自然歩む足も速くなる。
 いつもなら「はしたない」と怒られるようなスピードになっていたけれど、それを止める人が誰もいないことにさらに焦燥は募った。




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