後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 一見しっかりしていて逞しく見えるが、心のどこかが成長しきれていない、いびつさがあった。
 養い親や家族には愛されていたようだけれど、それだけでは埋めきれない何かがあったのだろうか。

 達観したように語っていたが、本当は父親に呼び寄せられたときに心のどこかで期待したはずだ。
 そして、その手を振り払われても、耐えていればもしかして、と蜘蛛の糸ほどの細さで希望を手放す事ができなかったのではないか。

 で、なければ不遇しかないこの地で、幼い子供が数年の時を過ごすことなど出来るはずも無い。
 もともとのポテンシャルはとても高く賢い子だ。
 この地を抜け出して養い親を頼るなり、一人で自由に生きるなり、どうとでもできたはずだ。

 だけど、そうはしなかった。

(本当に人の心って不可解で複雑だわ)
 そんな子が、初めての恋を知った。
 人と心を交わし、共に手を取り未来を夢見た。

(きっと止めても無駄ね。勝手にいなくなってしまうだけだわ。それなら、多少なりとも手綱をつけれるようにした方がいい)
 美しく、賢く、特殊な一族に育てられた娘。
 だけど、王妃にはたった一つの得られなかった愛を求めて泣いている、かわいそうな子供にしか見えなかった。

「分かりました。貴女は、これから婚約者の不運に心を痛めて寝込んでしまうのです。
 かわいそうな未来の義理の娘の為に、私は静養の場を提供しましょう。人の少ない静かな山奥の別荘です。きっと心も休まる事でしょう」
 そっと頬を流れる涙をぬぐってやりながら、静かな声で囁く王妃に、レイラは目を見開いた後、大きく頷いた。

「はい、王妃様。お心遣い感謝いたします」




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