後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「で、マリオンの意識も戻らないし、そのままここで世話になってたってわけ」
 再び、意識を取り戻したマリオンは、側についていたフィリアスに、これまでの経緯を聞いていた。

「ディアンさんには、お前の意識が戻ったのは伝えてある。そのあと一度来てくれたんだけど、意識がなかったから傷の確認だけして、いつもの探索に出かけていったよ。暗くなる前には戻るってさ」
 フィリアスは話しながらも、マリオンの体に響かないように少しだけ起こして背中にクッションを詰め込んだ。

「ずいぶんと世話になった………のは分かったが、………それはなんだ?」
 そうして差し出されたコップを胡乱な目で見つめた。
 中にはドロリとした青緑の液体が入っている。

「ん?毒抜きとか諸々入った薬湯だって」
 コップの中を見て固まっているマリオンにフィリアスがふしぎそうな顔で返した。
「………なんとも言えない香りがするんだが」
「そういうものなんだ、諦めろ。意識がなかっただけでもう何回も飲んでるから大丈夫だ」

 何が大丈夫なのか。
 いや、体に害はないという意味なのはわかるけれど、別の意味で何かが傷つきそうなのは気のせいなんだろうか?

 葛藤していると、自分で飲めないのかとフィリアスが手を差し伸べてくる。
 それを嫌そうな顔で避けた後、マリオンは、コップの中身を一息に飲み干した。

「ううぇっ」
 想像以上にひどい味に、マリオンは思いっきり顔を顰めた。
 それに笑いながら、フィリアスが水を差し出す。

「まあ、効果は絶大だ。それのおかげで、お前は死なずに済んだんだから」
「………わかってる」
 水を飲みながら、マリオンはかろうじて頷いた。
「レイラが言っていた。良き薬は苦痛あり、と」

「ふ〜〜ん、君にその守り紐を与えたのは本当に一族の子なんだねえ」
 唐突に割って入ってきた第三者の声に、マリオンは扉の方へと顔を向けた。
「ディアンさん、もう戻ってこられたんですか?」
 そして驚いたようなフィリアスの声でその男の正体を知る。

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