銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【レオン視点】
標高が上がるにつれ、周囲の空気は目に見えて冷え込んできた。
さっきまで生い茂っていた木々は姿を消し、周囲は白い霧と、冷徹な岩肌だけが支配する世界へと変わっていく。
「……くしゅんっ!」
後ろから、小さく可愛いらしいくしゃみが聞こえた。
振り返ると、エリーゼが身を縮こまらせ、白い息を吐きながら自分の腕をさすっている。
「エリーゼ、やはり無理をしていたな。休憩にするぞ」
俺は手頃な岩の突き出た、風の遮れる場所に彼女を誘導した。
そして、荒野の時と同じように、自分の厚手のマントを脱いで彼女の細い肩へと掛けてやる。
「あ……ありがとう、レオン。でも、レオンこそ寒くないの? さっきから風がとっても冷たいわよ」
エリーゼは俺のマントにすっぽりと包まれながら、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
彼女のその潤んだ琥珀色の瞳を見つめていると、昨夜、彼女の寝顔を見ながら心に誓った「牙を隠す」という自戒が、早くもグラグラと揺らぎそうになる。
「言っただろう、俺は獣人――」
「『皮下脂肪も毛並みも厚いから平気』、でしょう? でも、いくら狼さんだからって、限界はあるわ」
エリーゼは悪戯っぽく微笑むと、マントの中からそっと自分の小さな、温かい手を伸ばしてきた。そして、あろうことか、俺の頬をその両手で包み込んだのだ。
「……っ!?」
俺の銀色の耳が、驚きのあまりピンと垂直に立ち上がった。
「ほら、やっぱり冷たくなってる。……いつもレオンに守られてばかりだから、今度は私が、レオンを温めてあげる」
エリーゼは少し顔を赤くしながらも、真っ直ぐな瞳で俺を見つめ、その手のひらの体温を俺の肌へと伝えてくる。彼女の放つ聖属性の清らかな温もりが、冷えた俺の身体だけでなく、胸の奥にある獣の本能までをも、猛烈に熱くさせていく。
(このお嬢様は……本当に、無防備が過ぎる……!)
彼女に他意はない。ただ純粋に、俺を気遣っての行動だ。
だが、至近距離にある彼女の柔らかそうな唇や、俺の頬を包む小さな手の感触に、俺の理性は一瞬で限界を迎えそうになった。
俺は彼女の手首を優しく、けれど逃がさない強さで掴み、ゆっくりと自分の頬から引き離した。
「……エリーゼ。あまり俺を煽るな。これでも、お前を驚かせないように必死で我慢しているんだぞ」
「え……?」
俺の琥珀色の瞳の奥に宿る、隠しきれない「野性の熱」に気づいたのか、エリーゼは小さく息を呑み、その白い頬をたちまち夕焼けのように真っ赤に染め上げた。
標高が上がるにつれ、周囲の空気は目に見えて冷え込んできた。
さっきまで生い茂っていた木々は姿を消し、周囲は白い霧と、冷徹な岩肌だけが支配する世界へと変わっていく。
「……くしゅんっ!」
後ろから、小さく可愛いらしいくしゃみが聞こえた。
振り返ると、エリーゼが身を縮こまらせ、白い息を吐きながら自分の腕をさすっている。
「エリーゼ、やはり無理をしていたな。休憩にするぞ」
俺は手頃な岩の突き出た、風の遮れる場所に彼女を誘導した。
そして、荒野の時と同じように、自分の厚手のマントを脱いで彼女の細い肩へと掛けてやる。
「あ……ありがとう、レオン。でも、レオンこそ寒くないの? さっきから風がとっても冷たいわよ」
エリーゼは俺のマントにすっぽりと包まれながら、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
彼女のその潤んだ琥珀色の瞳を見つめていると、昨夜、彼女の寝顔を見ながら心に誓った「牙を隠す」という自戒が、早くもグラグラと揺らぎそうになる。
「言っただろう、俺は獣人――」
「『皮下脂肪も毛並みも厚いから平気』、でしょう? でも、いくら狼さんだからって、限界はあるわ」
エリーゼは悪戯っぽく微笑むと、マントの中からそっと自分の小さな、温かい手を伸ばしてきた。そして、あろうことか、俺の頬をその両手で包み込んだのだ。
「……っ!?」
俺の銀色の耳が、驚きのあまりピンと垂直に立ち上がった。
「ほら、やっぱり冷たくなってる。……いつもレオンに守られてばかりだから、今度は私が、レオンを温めてあげる」
エリーゼは少し顔を赤くしながらも、真っ直ぐな瞳で俺を見つめ、その手のひらの体温を俺の肌へと伝えてくる。彼女の放つ聖属性の清らかな温もりが、冷えた俺の身体だけでなく、胸の奥にある獣の本能までをも、猛烈に熱くさせていく。
(このお嬢様は……本当に、無防備が過ぎる……!)
彼女に他意はない。ただ純粋に、俺を気遣っての行動だ。
だが、至近距離にある彼女の柔らかそうな唇や、俺の頬を包む小さな手の感触に、俺の理性は一瞬で限界を迎えそうになった。
俺は彼女の手首を優しく、けれど逃がさない強さで掴み、ゆっくりと自分の頬から引き離した。
「……エリーゼ。あまり俺を煽るな。これでも、お前を驚かせないように必死で我慢しているんだぞ」
「え……?」
俺の琥珀色の瞳の奥に宿る、隠しきれない「野性の熱」に気づいたのか、エリーゼは小さく息を呑み、その白い頬をたちまち夕焼けのように真っ赤に染め上げた。