銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【エリーゼ視点】
「あ……ご、ごめんなさい……!」
レオンに手首を掴まれたまま、私はあまりの恥ずかしさに心臓が破裂しそうだった。
彼の瞳の奥にあった、今までに見たこともないほどの深い、そして熱い「男の目」。
ただの護衛でも、優しい先生でもない、一頭の獰猛な狼に睨まれたかのような、圧倒的な色気に、私の身体の芯が甘く痺れていく。
彼が、私のために「我慢」してくれている。
その言葉の意味が、お酒の抜けた今の私には、痛いくらいに理解できた。
彼は、自由になったばかりの私を誰よりも大切に想ってくれているからこそ、その強い独占欲を必死に抑え込んでくれているのだ。
「……いや。俺の方こそ、少し大人気なかった。すまない」
レオンはふっと目元を和らげると、掴んでいた私の手首を離し、代わりにその小さな手を、包み込むように優しく握り直した。
「行こうか。雲の向こうにある、お前の憧れの街へ」
「……ええ。行きましょう、レオン」
繋いだ手から、お互いの隠しきれない熱が伝わってくる。
まだ、私たちは「恋人」ではない。
過去の檻から抜け出したばかりの私と、過去の傷を癒やし始めた彼。
けれど、この険しい山道を一歩ずつ登るように、私たちは二人の距離を、ゆっくりと、けれど確実に縮めていく。
見上げれば、白く煙る雲の切れ間から、天空都市ハルシオンの美しい街並みが、かすかにその姿を現そうとしていた。
「……わぁっ!」
最後の急な岩場を登りきり、目の前の視界が開けた瞬間、私は思わず感嘆の声をあげていた。
そこは、文字通り「雲の上の世界」だった。
私たちが今まで歩んできた険しい登山道は、眼下に広がる白い絨毯のような雲海の下へと消えている。そして目の前には、白石で作られた美しい建造物が並ぶ、幻想的な都市が広がっていた。
建物の間を縫うように、薄い雲が生き物のように優しく流れていく。見上げる空は、王都で見るよりもずっと深く、吸い込まれそうなほどに青い。
「本当に、空の上の街に来ちゃったんだわ……」
前世の、あの冷たい病室。窓から見えるちっぽけな空を眺めては、「あの雲の上に行けたら、苦しくないのかな」なんて泣いていた日々が、まるで遠いおとぎ話のように感じられる。
「エリーゼ、足元。感動するのはいいが、まだ気が抜けているぞ」
すぐ隣で、レオンがふっと柔らかく目を細めて私を見つめていた。彼の銀色の髪が、下界よりも澄んだ山の風にさらさらと揺れている。
「ふふ、もう大丈夫よ。レオン先生のおかげで、一歩も滑らずに登りきれたもの」
私はそう言って、彼の方へとはにかんで見せた。さっき山道で、彼の頬に触れて「我慢している」と言われた時のドギマギは、まだ胸の奥で小さく燻っている。けれど、この圧倒的な絶景と、何より隣にレオンがいてくれるという事実が、私に最高の勇気を与えてくれていた。
「さあ、まずはこの街の商業ギルドに行ってみましょう! 雲の上でしか採れない、珍しい薬草があるかもしれないわ!」
私はレオンの手を引いて、新しい世界へと力強く一歩を踏み出した。
「あ……ご、ごめんなさい……!」
レオンに手首を掴まれたまま、私はあまりの恥ずかしさに心臓が破裂しそうだった。
彼の瞳の奥にあった、今までに見たこともないほどの深い、そして熱い「男の目」。
ただの護衛でも、優しい先生でもない、一頭の獰猛な狼に睨まれたかのような、圧倒的な色気に、私の身体の芯が甘く痺れていく。
彼が、私のために「我慢」してくれている。
その言葉の意味が、お酒の抜けた今の私には、痛いくらいに理解できた。
彼は、自由になったばかりの私を誰よりも大切に想ってくれているからこそ、その強い独占欲を必死に抑え込んでくれているのだ。
「……いや。俺の方こそ、少し大人気なかった。すまない」
レオンはふっと目元を和らげると、掴んでいた私の手首を離し、代わりにその小さな手を、包み込むように優しく握り直した。
「行こうか。雲の向こうにある、お前の憧れの街へ」
「……ええ。行きましょう、レオン」
繋いだ手から、お互いの隠しきれない熱が伝わってくる。
まだ、私たちは「恋人」ではない。
過去の檻から抜け出したばかりの私と、過去の傷を癒やし始めた彼。
けれど、この険しい山道を一歩ずつ登るように、私たちは二人の距離を、ゆっくりと、けれど確実に縮めていく。
見上げれば、白く煙る雲の切れ間から、天空都市ハルシオンの美しい街並みが、かすかにその姿を現そうとしていた。
「……わぁっ!」
最後の急な岩場を登りきり、目の前の視界が開けた瞬間、私は思わず感嘆の声をあげていた。
そこは、文字通り「雲の上の世界」だった。
私たちが今まで歩んできた険しい登山道は、眼下に広がる白い絨毯のような雲海の下へと消えている。そして目の前には、白石で作られた美しい建造物が並ぶ、幻想的な都市が広がっていた。
建物の間を縫うように、薄い雲が生き物のように優しく流れていく。見上げる空は、王都で見るよりもずっと深く、吸い込まれそうなほどに青い。
「本当に、空の上の街に来ちゃったんだわ……」
前世の、あの冷たい病室。窓から見えるちっぽけな空を眺めては、「あの雲の上に行けたら、苦しくないのかな」なんて泣いていた日々が、まるで遠いおとぎ話のように感じられる。
「エリーゼ、足元。感動するのはいいが、まだ気が抜けているぞ」
すぐ隣で、レオンがふっと柔らかく目を細めて私を見つめていた。彼の銀色の髪が、下界よりも澄んだ山の風にさらさらと揺れている。
「ふふ、もう大丈夫よ。レオン先生のおかげで、一歩も滑らずに登りきれたもの」
私はそう言って、彼の方へとはにかんで見せた。さっき山道で、彼の頬に触れて「我慢している」と言われた時のドギマギは、まだ胸の奥で小さく燻っている。けれど、この圧倒的な絶景と、何より隣にレオンがいてくれるという事実が、私に最高の勇気を与えてくれていた。
「さあ、まずはこの街の商業ギルドに行ってみましょう! 雲の上でしか採れない、珍しい薬草があるかもしれないわ!」
私はレオンの手を引いて、新しい世界へと力強く一歩を踏み出した。