凍てついた令嬢は、異国の太陽に抱かれる
第六十二話:純白の誓い、そして甘やかな檻の完成(エルサ・ゼオン・カイル視点)
【エルサ視点】檻の中で生きる、最高の幸福(覚悟)
ガルディニア王国の至聖堂。
鏡の中に映る私は、最高級のシルクと、大陸中から集められたという幻の白真珠が散りばめられた、目も眩むような純白のウェディングドレスに身を包んでいました。
「……本当に、どこまでも容赦のない過剰供給ですこと」
私は自嘲気味に、けれどこれ以上ないほど幸せそうに微笑みました。
前世の過酷な孤独、今世での実の親からの冷酷な搾取。かつての私は、この身をすっぽりと包み込む重厚なドレスの重みさえ、「それに見合う対価を支払わねば捨てられる」という恐怖の記号として処理していたでしょう。
けれど、今の私には分かっています。
このドレスも、頭上のティアラも、今日この日を祝福するために集まった国中の人々の歓声も、すべては私を世界一甘やかすために仕掛けられた【絶対的な溺愛という名の檻】なのだと。
一度入れば、二度と冷たい冬の世界へは戻れない、温かくて甘やかな幸福の檻。
「エルサ様、お仕度が整いました。……ああ、なんという神々しさ。我が国の至宝が、ついに世界一美しい花嫁になられた……っ!」
私の髪を整えていた侍女長マルタやニーナが、すでに式の前からハンカチを涙で濡らし、洪水のような涙を流して身悶えしています。
何も成果を出さなくても、ただそこにいるだけで、一生をかけて愛され、守られ、狂わされ続ける。
大人の大真面目な頭脳で、私はその不条理な運命を、完全に、そして生涯をかけて受け入れる【覚悟】を決めました。
「お待たせいたしました、ゼオン様。……私の人生の方程式を完全に狂わせた、最愛のバグ(あなた)の元へ、今、参ります」
ブーケを胸に抱きしめ、私はゆっくりと、光溢れるバージンロードへと歩みを進めました。
【ゼオン視点】至宝の完全なる監禁(きゅうさい)
大聖堂の扉が開き、溢れんばかりの光と共にエルサが姿を現した瞬間、俺の心臓は物理的に停止するかと思うほどの衝撃を受けた。
純白のドレスを纏い、琥珀色の瞳を真っ直ぐに俺へと向けて歩んでくる、世界で一番美しい俺の妃。
かつては誰にも顧みられず、冷たい地下室で真っ白に凍りついていた至宝が、今、俺の注ぎ続けた真心と恋心をその身に浴びて、世界で一番綺麗な大輪の薔薇のように咲き誇っている。
「ゼオン様」
俺の前に辿り着き、ベール越しに微笑むエルサ。その一点の曇りもない【素の笑顔】を見た瞬間、俺の胸の奥の独占欲と支配欲は、これ以上ない極上の歓喜によって満たされた。
「遅いぞ、エルサ。待ちくたびれて、今すぐお前を拉致して部屋に閉じ込めるところだった」
「ふふ、相変わらず不条理な時間感覚ですね。ですが……もう、逃げたりいたしませんわ」
エルサは自ら、その小さな手を俺の大きな手へと重ねてきた。
その瞬間、神前での誓いのキスを交わす。
何度も、何度も、お互いの魂を繋ぎ止めるように深く、熱く唇を重ね、俺の絶対的な体温(たいおん)であいつのすべてを領有(支配)していく。
「エルサ。お前が俺の檻に囲われる覚悟を決めたんだ。一生、俺の腕の中から出してやらないからな」
「ええ。貴方という名のバグに、生涯をかけて溺れさせていただきます」
ベールの向こうで耳まで真っ赤にしながらも、愛おしそうに俺に縋る我が妃。
お前が歩んできた四十年の冬は、今日、この瞬間、完全に過去のものとなった。これからは俺の隣という名の、世界一贅沢で甘やかな楽園の中で、ただ俺に愛されるためだけの永遠の春を、一生かけて貪り続けるがいい。
【カイル視点】過保護な包囲網、これにて完全なる終着(かんせい)
「……お見事です。これにて、我が国の『至宝完全救済包囲網』は、永久に破られることのない鉄壁の聖域となりましたね」
最前列で参列しながら、私は手元の予定表(今夜から始まる一週間の建国未曾有の祝祭スケジュール)を握り締め、眼鏡のブリッジを静かに押し上げました。
祭壇の上で、ゼオン殿下に抱きすくめられ、世界一幸せそうに笑っていらっしゃるエルサ様。
前世でも今世でも、実の親からすら愛を向けられず、真っ白に磨り潰されるだけだった異邦の天才。その彼女が、今、ガルディニアという国そのものが張り巡らせた、過保護な溺愛の檻の中で、完璧な「お姫様」として覚醒されたのです。
「カイル様……! エルサ様が……あのお労しかったエルサ様が、本物の家族(わたしたち)のなかで、あんなに美しくお笑いに……っ!」
私の隣では、国王アルベルト陛下とエレオノーラ王妃様が、威厳も何もかなぐり捨ててハンカチで目を覆い、大洪水の涙を流して号泣されていました。回廊の陰に控える侍女たちや厨房の者たちにいたっては、もはや声にすらならない感動の嗚咽を漏らしています。
エルサ様、あなたがどんなに「私はコストだ」と逃げようとも、この国は、この王宮は、あなたを絶対に手放しません。
あなたが自らの意志でその甘やかな檻に入ったその日から、私たちの過保護な甘雨は、あなたの未来を永遠に、果てなき幸福の色彩だけで満たし続けるのです。
【エルサ視点】檻の中で生きる、最高の幸福(覚悟)
ガルディニア王国の至聖堂。
鏡の中に映る私は、最高級のシルクと、大陸中から集められたという幻の白真珠が散りばめられた、目も眩むような純白のウェディングドレスに身を包んでいました。
「……本当に、どこまでも容赦のない過剰供給ですこと」
私は自嘲気味に、けれどこれ以上ないほど幸せそうに微笑みました。
前世の過酷な孤独、今世での実の親からの冷酷な搾取。かつての私は、この身をすっぽりと包み込む重厚なドレスの重みさえ、「それに見合う対価を支払わねば捨てられる」という恐怖の記号として処理していたでしょう。
けれど、今の私には分かっています。
このドレスも、頭上のティアラも、今日この日を祝福するために集まった国中の人々の歓声も、すべては私を世界一甘やかすために仕掛けられた【絶対的な溺愛という名の檻】なのだと。
一度入れば、二度と冷たい冬の世界へは戻れない、温かくて甘やかな幸福の檻。
「エルサ様、お仕度が整いました。……ああ、なんという神々しさ。我が国の至宝が、ついに世界一美しい花嫁になられた……っ!」
私の髪を整えていた侍女長マルタやニーナが、すでに式の前からハンカチを涙で濡らし、洪水のような涙を流して身悶えしています。
何も成果を出さなくても、ただそこにいるだけで、一生をかけて愛され、守られ、狂わされ続ける。
大人の大真面目な頭脳で、私はその不条理な運命を、完全に、そして生涯をかけて受け入れる【覚悟】を決めました。
「お待たせいたしました、ゼオン様。……私の人生の方程式を完全に狂わせた、最愛のバグ(あなた)の元へ、今、参ります」
ブーケを胸に抱きしめ、私はゆっくりと、光溢れるバージンロードへと歩みを進めました。
【ゼオン視点】至宝の完全なる監禁(きゅうさい)
大聖堂の扉が開き、溢れんばかりの光と共にエルサが姿を現した瞬間、俺の心臓は物理的に停止するかと思うほどの衝撃を受けた。
純白のドレスを纏い、琥珀色の瞳を真っ直ぐに俺へと向けて歩んでくる、世界で一番美しい俺の妃。
かつては誰にも顧みられず、冷たい地下室で真っ白に凍りついていた至宝が、今、俺の注ぎ続けた真心と恋心をその身に浴びて、世界で一番綺麗な大輪の薔薇のように咲き誇っている。
「ゼオン様」
俺の前に辿り着き、ベール越しに微笑むエルサ。その一点の曇りもない【素の笑顔】を見た瞬間、俺の胸の奥の独占欲と支配欲は、これ以上ない極上の歓喜によって満たされた。
「遅いぞ、エルサ。待ちくたびれて、今すぐお前を拉致して部屋に閉じ込めるところだった」
「ふふ、相変わらず不条理な時間感覚ですね。ですが……もう、逃げたりいたしませんわ」
エルサは自ら、その小さな手を俺の大きな手へと重ねてきた。
その瞬間、神前での誓いのキスを交わす。
何度も、何度も、お互いの魂を繋ぎ止めるように深く、熱く唇を重ね、俺の絶対的な体温(たいおん)であいつのすべてを領有(支配)していく。
「エルサ。お前が俺の檻に囲われる覚悟を決めたんだ。一生、俺の腕の中から出してやらないからな」
「ええ。貴方という名のバグに、生涯をかけて溺れさせていただきます」
ベールの向こうで耳まで真っ赤にしながらも、愛おしそうに俺に縋る我が妃。
お前が歩んできた四十年の冬は、今日、この瞬間、完全に過去のものとなった。これからは俺の隣という名の、世界一贅沢で甘やかな楽園の中で、ただ俺に愛されるためだけの永遠の春を、一生かけて貪り続けるがいい。
【カイル視点】過保護な包囲網、これにて完全なる終着(かんせい)
「……お見事です。これにて、我が国の『至宝完全救済包囲網』は、永久に破られることのない鉄壁の聖域となりましたね」
最前列で参列しながら、私は手元の予定表(今夜から始まる一週間の建国未曾有の祝祭スケジュール)を握り締め、眼鏡のブリッジを静かに押し上げました。
祭壇の上で、ゼオン殿下に抱きすくめられ、世界一幸せそうに笑っていらっしゃるエルサ様。
前世でも今世でも、実の親からすら愛を向けられず、真っ白に磨り潰されるだけだった異邦の天才。その彼女が、今、ガルディニアという国そのものが張り巡らせた、過保護な溺愛の檻の中で、完璧な「お姫様」として覚醒されたのです。
「カイル様……! エルサ様が……あのお労しかったエルサ様が、本物の家族(わたしたち)のなかで、あんなに美しくお笑いに……っ!」
私の隣では、国王アルベルト陛下とエレオノーラ王妃様が、威厳も何もかなぐり捨ててハンカチで目を覆い、大洪水の涙を流して号泣されていました。回廊の陰に控える侍女たちや厨房の者たちにいたっては、もはや声にすらならない感動の嗚咽を漏らしています。
エルサ様、あなたがどんなに「私はコストだ」と逃げようとも、この国は、この王宮は、あなたを絶対に手放しません。
あなたが自らの意志でその甘やかな檻に入ったその日から、私たちの過保護な甘雨は、あなたの未来を永遠に、果てなき幸福の色彩だけで満たし続けるのです。