恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~
「はい。えっと、耳に心地良い声が好きなんですが、そのために歌手や声優さんの動画やCDをたくさん……」

 気持ちも落ち着いてきた。素直に説明する。

「そうなんだ。俺も音楽は好きだ。洋楽が好きなんだけど、汐見さんはそういうのは……」

 風早は相槌を打ちながら聞き、質問も投げかけてくれる。

「洋楽も聴きますよ」

 話が弾むうちに、車はいつの間にか高速道路に入った。

 でも郁はお喋りに夢中だった。

 風早の声は心地良いし、会話のテンポもちょうど良い。

 直接会話したのは昼間の出来事が初めてなのに、ここまで自分の喋り方と噛み合う点にも感激した。

「外国語はまた違う響きを持っていて面白いというか……そこに惹かれますね」

 でも好きな理由を説明したときは、風早にくすっと笑われた。

「歌自体ではないんだな」

 郁は恥ずかしさと膨れる気持ちを両方覚える。

 彼は少しからかい好きなところがあるようだ。

「もう、そういう意味では……」

 拗ねたように言ってしまった。

 ただし不快感からではない。

 彼の発する声のトーンはやわらかくて、人の声の機微に鋭い郁には『悪意がない』とわかるからだ。
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