恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

初体験デート

「良かったんですか!? あんな高級なお店……」

 海沿いにあるホテルのエレベーターに乗り込んでから、郁はおろおろと質問した。

 なのに風早は下の階へ向かうボタンを押しながら、しれっと答える。

「俺が誘ったんだから、もちろんだよ」

 確かにここでホテルディナーを食べたのは、風早が連れてきてくれたからだ。

 高級とはいえ、オフィスカジュアル姿でも入れる店でほっとしたが、それでも食事は大変豪華だった。

 それに代金は会計時に、風早がさっさと二人分払ってしまった。

 場所にも食事にも驚いたのに……。

(デートみたいなことを……って言われたのは本当だけど! クオリティが想像と違うよ!)

 内心で叫んだ。

 海外製の車で海辺をドライブ。

 カジュアルとはいえ、高級レストランでディナー。

 両方、初体験だ。

「郁は初々しいんだな」

 どうやら郁の気持ちはわかるようだ。

 エレベーターを降り、エントランスへ向かって歩く間、風早が少しだけ距離を詰めて言った。

 体がわずかに触れる位置になり、ドキッとした郁だが、内容には膨れてしまう。

「ど、どうせ慣れてないです」

 拗ねた声が出た。

「そうは言っていないだろう」

 でも風早から返ってきたのは、くす、と小さく零れた笑い声だった。
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