恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~
 郁の心臓がドキッと跳ねる。

 笑い声なんてあまり聴いた機会がない。

 だけど声音がすごく艶っぽくて魅力的だ。

 しかもその上……。

(なんだか……愛おし、そう……?)

 そう感じて、ぼっと顔が熱くなった。

 そんなわけはない。

 おまけに混ぜ返す言い方なのに。

 声の響きはどうしてもそう聞こえた。

(う、ううん! そんなわけないよ! 恋人同士みたいに過ごすから……それだけだって)

 必死に自分に言い聞かせた。

 なのに駐車場で風早の車に着いたとき、風早ときたら、郁を軽く抱き寄せて呟いた。

「こんな遠くまで付き合ってくれて……ありがとう」

 囁きはやはり『愛おしい』に似た響きで……声も相まって、郁の心臓を強く跳ねさせた。

「ふふっ、やっぱりかわいいな」

 そして風早は医務室のときと同じように言い、郁はますます恥じ入ることになった。
< 14 / 22 >

この作品をシェア

pagetop