恋愛偏差値0.01。
16.薬より甘い存在
「入って」
そう言われ、私はそっと玄関へ足を踏み入れた。
大理石調の床に、大きなシューズボックス。
広々とした玄関は、高校生二人が暮らしているとは思えないほど綺麗に整えられている。
「……すごい」
思わず小さく声が漏れた。
リビングはコンクリート打ちっぱなしの、お洒落な空間だった。
壁掛けテレビに、大きめのソファー。
家具も家電も必要最低限なのに、どこか洗練された雰囲気がある。
「じゃあ、俺、部屋行くわ」
「ばいばいっ♡」
凪くんがひらひらと手を振る。
狂犬さんは玄関のほうへ向かいかけると、ふと思い出したように振り返った。
「……眼鏡ちゃん。凪になんかされたら叫んで」
悪戯っぽく笑いながら、そう言う。
「ひどぉ〜い♡」
凪くんは口を尖らせて抗議する。
二人のやり取りに、思わず笑みがこぼれた。
「美月ちゃ〜ん! 僕の部屋、案内するねっ!」
そう言って歩き出した凪くんの後を、私はついて行く。勝手なイメージだけど、凪くんの部屋には可愛いぬいぐるみがたくさん置いてありそうだ。
いつも甘えん坊で、ふわふわした雰囲気だから。そんなことを考えながら、部屋のドアが開くのを待った。
「あーー……」