王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
(とにかく、まずは現状を把握しなければならないわね)
 この部屋が自室であることは確かだ。わからないのは、今日がいつなのか。そして、なぜ生きているのか。あのとき、自分の命の灯が消えるのを確かに感じたというのに。
 心を落ち着かせたエメリーネは、ベルを鳴らして人を呼ぶ。
(誰が来てくれるかしら。シーラならいいのだけれど)
 シーラとはエメリーネ付きの侍女だ。ラモン伯爵家の令嬢で、彼女をエメリーネ付きにと望んだのは王妃でもある母だった。ラモン伯爵夫人と王妃の仲が良かったというのも理由の一つだが、シーラは立場をわきまえた振る舞いができた。変に王族に媚びようとしない点も評価されたらしい。
 また、年齢もエメリーネの二つ上ということもあり、侍女というよりは話し相手としてつけられたのだ。
「おはようございます、エメリーネ様」
「おはよう、シーラ」
 シーラの愛らしいそばかす顔を見たら、涙が込み上げてきそうになったが、ここで泣いたら彼女に変に思われてしまう。
「どうされました? エメリーネ様」
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