王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 まじまじとシーラの顔を見つめていたのは無意識だった。彼女の容姿から、今がいつであるかを判断しようとしたが、どうやらシーラはここ数年、容姿が特に変わっていないらしい。
 くせのある赤毛は、いつも邪魔だからという理由で一本の三つ編みに結わえてあるし、恥ずかしがり屋の彼女は大きな眼鏡をかけて素顔を隠している。だが、眼鏡の奥に見える焦げ茶の瞳は、いつも清らかに澄んでいた。
「ああ、ごめんなさい。ちょっと夢見が悪くて……。ぼんやりしていたわ。ところで、今日はいつだったかしら……?」
「エメリーネ様。やはり、連日の準備でお疲れなのですね? ゆっくり休んでくださいと言いたいところですが、今日が本番ですから……今日を乗り越えたら、明日はゆっくりとお休みください」
 こうやってシーラが親しげに声をかけることを許されるのも、エメリーネとシーラの仲だから。
「本番……?」
「ええ、今日はエメリーネ様の十七歳の誕生日パーティーです。近隣諸国からもエメリーネ様の誕生日を祝って、たくさんの方が駆けつけてくださっていますから。ビシッとしてください。朝食は、お部屋に運びますね」
「ええ、お願い」
 部屋を出ていくシーラの後ろ姿を見送り、エメリーネはふっと息を吐いた。
 シーラは昔のままだ。時には姉のように厳しく言い、時には友のように励ますように言葉をかけてくれる。それだけでも胸が熱くなった。
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